2020 Fiscal Year Research-status Report
コンピュテーショナルサーモグラフィ―計算撮像技術によるサーモグラフィの革新―
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20K21822
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
高谷 剛志 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 特任研究員 (90809758)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | コンピュテーショナルフォトグラフィ / サーマルイメージング / コンピュータビジョン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「サーモグラフィは温度計測技術である」という固定観念を崩し,より多様な計測を可能にするコンピュテーショナルサーモグラフィを萌芽することであり,遠赤外光計測に基づく形状計測や光学特性計測などへの応用に展開する.サーモグラフィは熱を直接的に計測しているわけではなく,遠赤外光を通して間接的に温度を計測している.そこで,コンピュテーショナルフォトグラフィ分野で発展してきた照明光学系やイメージング光学系の工夫によって,従来のサーモグラフィでは計測対象となっていなかった情報を計測する.これを実現するため,本研究では,計測システムの構築,観測モデルの構築,計測手法の開発という工程で研究を進める計画である.今年度は,可制御な熱源と産業用サーマルカメラとを用いたアクティブセンシングシステムを構築した.一般的なサーマルカメラは,マイクロボロメータを用いており,カメラ自体の温度などの影響を受けるため,外部信号による計測タイミング制御に対応していない.そこで,サーマルカメラの計測周期と同じ周期で点滅する遠赤外光源を用いることで,得られる時系列の輝度変化から光源とサーマルカメラのタイミングずれを計算し,時間同期する手法を実現した.観測モデルでは,光学的な側面と熱力学的な側面の両方を考慮する必要があるため,単純な平面形状を仮定し,従来の光輸送モデルをベースとして,材質の放射率をパラメータとする吸収現象および熱拡散方程式,さらにランバート放射を導入した光熱輸送モデルを定式化した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各年度において,計測システムの構築,観測モデルの構築,計測手法の開発の全工程を小さいサイクルで実施する予定であったが,パンデミックの影響によって,サーマルカメラの入手が困難になった点と実験スペースが確保できなかった点により,年度の後半まで実験系を組むことができなかった.また,海外インターン生の来日予定もなくなったため,実験の実施において支障がでた.結果として,今年度は計測手法の開発まで実施できなかったため,計画からはやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,構築した計測システムと観測モデルに基づき,まずは,物体形状を計測する手法について開発を進める.これまでの自身の研究成果より,遠赤外光を用いることで,可視光領域では透明なガラスや低反射率の黒体を対象とした形状計測が可能であることがわかっている.これは様々な材質の放射率が比較的高いことに起因している.一方で,熱伝播は遅いため,計測時間が長くなっていた.今年度に構築した計測システムでは,フレームレート程度の速さで光源を変調することができるため,変調信号に対する放射信号の振幅・位相変化量から,対象物体の形状と材質情報を推定することを計画している.
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Causes of Carryover |
パンデミックの影響により,購入を予定していたサーマルカメラが入手困難となった.また,在宅勤務となり,実験を実施可能な場所や荷物を保存する場所がなかったため,物品購入を控えた.旅費分については,参加を予定していた会議がオンライン開催となり,参加無料となった.2021年度は,筑波大学に移動し,実験に十分な場所の確保を行えた点およびメーカ・代理店の営業が正常に戻りつつある点から,2020年度に購入を予定していた物品を購入する計画である.
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