2020 Fiscal Year Research-status Report
Chemical properties of North Pacific intermediate water and its impact to biological production
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20K21838
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西岡 純 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (90371533)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 南極中層水 / 北太平洋中層水 / 栄養塩化学的特性 / 栄養物質濃度データセット / 生物生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、南極中層水(SAMW)および北太平洋中層水(NPIW)の化学的特性(N、P、SiとFe濃度比)の違いを比較し、その形成メカニズムを精査することで、中層水形成を介した南北両半球の栄養物質循環と生物生産をコントロールする要因の解明を目指す。NPIW形成域とSAMW形成域の化学的特性とその形成過程を、新たなサンプル分析を含めて、既存のデータとともに解析する。本年度は、2019年10月~12月に実施された白鳳丸KH-19-6次航海において南アメリカ大陸西岸の南太平洋赤道域から南極海で取得したサンプルを分析し、南半球のSAMWの化学的特性の解析を行った。海洋の生物地球化学的循環を理解するために、溶存鉄の分布は重要な情報であるが、SAMWを含む東部南太平洋から南極海にかけては観測データが不足しており、未だその分布の解明には至っていない。白鳳丸KH-19-6次航海のサンプルを分析した結果、南緯20度から高緯度側で表層では溶存鉄濃度は極めて低く、鉄が枯渇している南極中層水(AAIW)および南極中層水(SAMW)の影響が考えられた。また、2500~3000 mに南北3000 km以上に広がる高濃度の溶存鉄を含む水塊が確認された。これは、δ3Heの鉛直断面図から、チリ海嶺上の熱水プルーム由来と考えられたため、本海域では、この熱水プルームが重要な外部鉄供給源であることが示唆された。得られたデータを基に、今後は、本研究で独自に作成する北方圏縁辺海を含む北太平洋の栄養物質濃度データセットを利用し、北太平洋中層水(NPIW)の化学的特性を解析し、今年度得られた南極中層水(SAMW)の化学的特性との違いを比較する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、予定していた通り2019年10月~12月に実施された白鳳丸KH-19-6次航海において南アメリカ大陸西岸の南太平洋赤道域から南極海で取得したサンプルを分析し、南半球のSAMWの化学的特性の解析を行うことができた。しかし、北太平洋のデータセットの作成については、コロナ禍の影響もあり、作業が限定された。その点を鑑み研究はやや遅れていると判断された。R3年度にこのデータセットの作成を早急に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究で独自に作成する北方圏縁辺海を含む北太平洋の栄養物質濃度データセットを作成し、北太平洋中層水(NPIW)の化学的特性を解析し、今年度得られた南極中層水(SAMW)の化学的特性との違いを比較する。また、これらの2つの水塊の化学的特性の違いが、表層の生物生産の種組成にどの様な違いを生み出しているのかを考察する。
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Causes of Carryover |
R2年年度に北太平洋のデータセットを作成することがコロナ禍で作業が滞り、人件費として計上していた予算の一部が使用できなかった。この分はR3年度にデータ解析を実施するために人件費を使用することとした。
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Research Products
(3 results)