2020 Fiscal Year Research-status Report
A study on parasitic chytrids on snow algae
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20K21840
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
竹内 望 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (30353452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鏡味 麻衣子 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (20449250)
村上 正志 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (50312400)
瀬川 高弘 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (90425835)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ツボカビ / 雪氷藻類 / 氷河 / 積雪 / 寄生性菌類 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,まず国内外の積雪で雪氷藻類及びツボカビを含む試料を採取することを計画していたが,COVID19の影響で,国外の調査は中止となり,国内の調査も限定的なものとなった.それでも,山形県の月山の積雪,および富山県の立山の積雪の調査を実施し,試料を得ることができた.雪氷藻類とツボカビの分析については,古い文献でも記載されているアラスカの氷河で2015年に採取して保管した雪氷試料を使って分析を行なった.その結果,氷河上の3箇所の試料から,緑藻の1種Ancylonema nordensholdiiに寄生する多数のツボカビを確認することができた.ツボカビの形態を詳しく蛍光顕微鏡で観察したところ,仮根などの形態が異なる複数種が存在し,少なくとも3種に分けることができた.また,ツボカビの胞子嚢のサイズによる分類をした結果,藻類に寄生してまもないツボカビから,寄生後藻類内容物を吸い取って遊走子を放出したものなど,ツボカビの生活史を段階的に辿ることができた.このような観察結果は,実際に氷河上でツボカビが雪氷藻類細胞に積極的に寄生して活動していることを示している.さらに氷河上の氷表面の試料とクリオコナイトホールと呼ばれる水溜りの試料の雪氷藻類のツボカビの被寄生率を求めた結果,クリオコナイトホールの藻類の方がツボカビに寄生されている割合が大きく,高いところでは30%を超えることが明らかになった.これはツボカビが氷河上でも,水が滞留する環境に集中していることを示唆している.アラスカを含め,グリーンランド,スバールバル,シベリア等のサンプルを用いて,ツボカビのシングルセルDNA配列の解析を試みた結果,ツボカビに一致する配列は得られなかった.DNAデータベースに登録されたツボカビが限定的である可能性があるが,引き続き配列解読を試みる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた,米国アラスカの氷河の調査は実施できなかったが,以前に採取された試料を分析するによって,藻類に寄生したツボカビの形態解析を行うことができた.得られた観察結果は,いままでに報告のない特徴が多く,氷河性ツボカビの種構成や生活史を形態から明らかにすることができた.さらに氷河上の生息場所条件による藻類のツボカビの被寄生率を求めることができた.この被寄生率も,従来報告のない値で,氷河性ツボカビの実態を初めて示すものである.以上の通り,期待通りの成果を1年目に得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査による試料採取については,COVID19の感染状況をみながら,できる範囲で国内の積雪の調査を実施する予定である.昨年に引き続き,山形県の月山,富山県の富山県を予定している.国外アラスカの氷河の調査も,COVID19の感染状況が改善すれば,夏から秋に実施したい.採取した,雪氷藻類のツボカビについては,形態観察とDNA解析を引き続きおこない,その実態を解明する予定である.1年目はツボカビの種同定を行うためにDNA配列の解読をシングルセルによって試みたが,ほとんどが読むことができなかった.今後,プライマーの選択や抽出方法を工夫して,引き続きツボカビのDNA配列を解読していく予定である.アラスカの氷河試料の分析については,1年目に分析した2015年のサンプルに加え,2001年,2010年,2019年等の異なる年のサンプルの解析もすすめ,ツボカビ寄生の年変動や季節変動がないかを明らかにしていく予定である.さらに,1年目は緑藻Ancylonema nordensholdiiに寄生するツボカビを中心に解析を行なったが,それ以外の藻類種に寄生するツボカビについても詳細に分析していく予定である.
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Causes of Carryover |
昨年度,実施予定だった現地調査がCOVID19の影響で実施することができず,その分の旅費を次年度にくりこした.2021年度に引きひつき現地調査を実施する予定であるが.できなければその分を,試料の分析項目を増やす分に(物品費)として使用する計画である.
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