2020 Fiscal Year Research-status Report
生体内分子イベントを指標とした老化要因物質の高速発光判定基盤技術の創成
Project/Area Number |
20K21851
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
金 誠培 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (60470043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 紀郎 国立研究開発法人理化学研究所, 情報システム本部, ユニットリーダー (20415160)
桝屋 啓志 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 室長 (40321814)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 生物発光 / イメージング / 可視化 / 老化要因物質 / 一分子型生物発光プロ ーブ / AI / ランキング |
Outline of Annual Research Achievements |
化学物質は免疫系や内分泌系などを介して老化や癌などの疾病に影響する。とりわけ、一部の小分子化学物質(ラパマイシン、レスベラトロール、アスピリン、ステロイド系など)が寿命に影響することがサルの実験などで明らかになっている。 本研究で、理研の桝屋/小林らは、5万種以上の化学物質のセマンティック・ウェブ(機械可読な形で記述された意味符号)を用いて、老化要因性を持つと思われる化学物質のランク付け作業を行った。まず、このウェブの性質情報により老化要因性に特化した知的推論(AI)アルゴリズムを開発した。その後、このデータベース上の小分子化学物質(1千Da以下)を老化要因性の予測値によりランキングした。 このAI作業により、ラパマイシンなどが高いランクに位置することが分かったため、金らはラパマイシンに特化したプローブデザインを検討した。そのプローブデザインとしてラパマイシンと特異的に結合する蛋白質であるFRBとFKBPを産総研独自の生物発光酵素(ALuc;産総研登録商標)のNとC末端に遺伝子工学的につけた融合蛋白質式の発光プローブを開発した。この発光プローブは、ラパマイシンと結合して分子内での折りたたみ反応が起こることで、分子歪みが起こり、その結果、発光輝度が上がる現象が起こった。この分子歪みセンサーの発光プローブで老化要因物質のラパマイシンなどを測定する手法をMethod Mol Biolなどに報告した。 また、老化要因物質の活性を検出するためには、発光標識の多色化も重要課題である。そこで、老化要因物質可視化プローブの多色化を見据えた発光システムの開発も行った。まずALucやウミシイタケ発光酵素などの海洋生物由来の発光酵素を、C6位置に2重結合を伸ばした構造の発光基質と発光させることにより、青から赤まで全可視光領域にわたって選択的に発光する虹色発光標識ポートフォリオを開発できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究期間中、理研の約5万種類の化学物質のセマンティック・ウェブ(機械可読な形で記述された意味符号)より老化要因性化学物質をランク付けができた。また、代表的な老化要因物質であるラパマイシンの検出に関係する発光プローブの開発プロトコルなどを定立できたことから、当初の計画通りに進んでいると自負する。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、老化要因性化学物質のランキングデータができたことから、その結果を踏まえ、上位にランキングされた化学物質の老化要因性を定量可視化する発光プローブを開発していく。また、今年度が計画の最終年度であるため、全体の研究成果を纏め、論文化、学会発表などに努める。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大事態を受け、研究期間中、実験室の閉鎖があり、その後でも研究所内での感染防止措置が取られたため、当初の計画より一部遅れがあった。そのため、未使用額が発生した。
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Remarks |
本研究成果に基づいて、2021年1月26日にプレスリリースを行った。
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