2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K21853
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中島 一紀 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50540358)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 金属結合ペプチド / 都市鉱山 / ファージディスプレイ / バイオベースマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,バイオマスとタンパク質を組み合わせることで都市鉱山からの貴金属の回収が可能なバイオベースの金属イオン吸着剤を開発する。 昨年度の研究において,金結合タンパク質(AuBP)と多糖結合モジュール(CBM)を融合した融合タンパク質AuBP-CBMを作製し,そのAu3+吸着機能が確認された。そこで本年度は,様々な融合タンパク質のラインナップを作製し,そのセルロース吸着機能および金属吸着機能を調査した。融合タンパク質の作製の過程において,遺伝子構築およびタンパク質発現に成功したものを用いてその後の実験を行った。AuBP-CBMをベースタンパク質として,CBMのN末端およびC末端の両方にAuBPを配置したAuBP両端型,AuBP-CBM を2つ連結したCBMタンデム型を作製した。これら3つの融合タンパク質のセルロース吸着性および金属結合性はそれぞれ異なったが,最終的な効率を示すセルロースあたりのAu3+回収率はAuBP両端型が最も高かった。また,X線光電子分光法(XPS)により,セルロース上に吸着したAuがAu(0)であることを確認した。AuBP両端型を固定化したセルロースは,白金族および遷移金属(Au, Pt, Pd, Cu, Co, Ni, Zn)を含む溶液中からAuを高選択的に回収することが可能であり,セルロース上のAuはチオ尿素を用いて89%脱着することができた。この際,AuはAu+に酸化され,チオ尿素と錯体を形成したと考えられる。 また,ろ紙以外のセルロース材料として,高機能性材料として注目を集めているセルロースナノファイバーの利用を検討した。タンパク質の吸着性について調査したところ,ろ紙よりも3倍以上の高い吸着性を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
タンパク質の分子デザインにより,Au3+回収に適したバイオベース吸着材料を作製することができた。一方で,新型コロナ感染症の影響で大学が閉鎖された時期があり,またその後の研究活動も大きく制限されていたこともあり,同時並行で進めていたファージディスプレイ法による金属結合ペプチドの獲得において,所望のペプチド配列を獲得することができなかった。効率的な金属回収技術のためには高結合性のペプチド配列の獲得が必須であり,研究期間の延長を申請して,次年度も引き続き検討していくこととした。以上より,進捗状況については,やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
通常のファージディスプレイ法では,ターゲット物質として固体が用いられ,それは貴金属元素についても同様である。つまり,これまでに報告されている貴金属結合ペプチドは固体の貴金属に結合するペプチドであり,それを貴金属イオンの回収に用いられている。しかし,原理的にはターゲットは貴金属イオンである方がより効率的な結合・回収ができると考えられる。したがって,次年度は貴金属イオンをターゲットとしたファージディスプレイ法を検討し,貴金属高結合性ペプチドの獲得に取り組む。また,昨今の世界情勢により,供給不足および価格高騰が懸念されるパラジウムやニッケルもターゲットに含め,貴金属・レアメタルの新規回収技術を開発する。
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Causes of Carryover |
前述の通り,新型コロナ感染症の影響で大学が閉鎖された時期があり,またその後の研究活動も大きく制限されていたこともあり,研究の進捗が予定より大幅に遅れたため,研究期間の延長を申請した。研究費の使用計画については,主に金属結合ペプチドを獲得するための実験にかかる物品費と情報収集のための旅費を予定している。
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Research Products
(4 results)