2021 Fiscal Year Research-status Report
地球温暖化の生物間相互作用への影響-環境DNA解析で植物利用者の変化を解明する
Project/Area Number |
20K21855
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 伸二 人間環境大学, 人間環境学部, 准教授 (40228945)
森長 真一 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80568262)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 生物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年憂慮されている地球温暖化は,野生生物の生存についても大きな影響を与えると考えられている.植物は動物と比較して移動能力に乏しいため,気温の上昇に即応して分布を移動させることが困難であるが,植物と共生関係にある多くの動物は,気温の上昇に対して,分布を迅速に北上させることが可能である.このミスマッチが生物間相互作用を破綻させ,植物集団の存続を危うくする可能性がある.本研究では,環境DNAの手法を植物体そのものに応用して,分布の南端における生物間相互作用が,分布中心域とどのように違うのかを定量評価して,地球温暖化が植物集団へ及ぼす影響を予測することを目指す.そのために,環境DNAによる生物間相互作用の解析手法の確立を目指し,植物とそれを利用する既知の動物の遺伝的バーコーディングを行い,種判別法を確立する.すでに採取済みのサンプルを用いて,これまでによく用いられてきた分子種を用いて,既知の動物が種判別できることを確認しておく.また,メタゲノムバーコーディングを行うためのDNA抽出ならびにPCR増幅の条件設定について検討する必要がある.さらに,植物と共生する動物が気候変動に伴い,植物の分布変遷とどのように協調して,分布を変遷させてきたかを明らかにすることも重要な課題である. 平成21年度は,前年度から引き続き,イヌビワの嚢果からDNAを抽出し,共生すると考えられる動物のミトコンドリアDNAを増幅するプライマーを探索し,実験条件を検討した.結果として,イヌビワコバチ以外にいくつかの節足動物種のDNAが検出された.また,イヌビワとイヌビワを利用するイヌビワシギゾウムシを国内全域からサンプリングし,両者の集団系統樹を作成した.その結果,イヌビワとイヌビワシギゾウムシは,過去の気候変動下において,同調的に分布変遷を行っている可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナ感染症拡大に伴い,野外調査が当初の予定通りには進まなかった.2021年度はその遅れを取り戻すように研究を進めたが,当初の予定通りに進行しているとまではいえない.2022年度には,この遅れを取り戻すように研究を進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,イヌビワの嚢果を用いたメタバーコーディング的解析と同時に,イヌビワと共生する複数の動物種が,過去の気候変動に伴って,どのように分布変遷をしたかを明らかにすることを目標とする.
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた研究計画の一部が,2021年度に持ち越しになったが,2021年度も時間の関係で未だ当初の研究計画に追いついていない状況であり,そのための予算が消費されていない状況である.
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