2020 Fiscal Year Research-status Report
金属酸化物の酸化特性を利用しためっき廃液処理と肥料製造プロセスの開発
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20K21866
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永長 久寛 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (90356593)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 触媒 / 酸化還元特性 / リン資源 / ホスフィン酸イオン / 遷移金属酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
無電解ニッケルめっき工程ではホスフィン酸イオン(H2PO2-)が金属還元剤として用いられ、ホスフィン酸イオンを含む廃液の量は年間120,000トンに及び、リン成分は産業廃棄物として処理される。めっき廃液中のホスフィン酸イオンは数%程度の濃度になるため、これらを効率よく亜リン酸に酸化できればCaCO3との反応により亜リン酸カルシウムとして沈殿、分離回収し、肥料として再利用することができるため、廃液処理および枯渇性のリン資源の回収・再利用を両立できる。本研究では、安価な遷移金属を触媒活性成分として、温水中でホスフィン酸を亜リン酸に酸化する触媒酸化プロセスの構築を目標として、優れた酸化・還元特性を示す触媒材料を開発する。 初年度は、銅の酸化特性の向上を目指し、異種元素の添加による酸化還元特性の向上を図った。酸化銅触媒の調製法として水溶液中の銅イオンに炭酸ナトリウム水溶液を添加することにより前駆体を得た後、酸化処理を行うことにより目的とする酸化物を調製した。前駆体調製時に硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛を共存させることにより共沈殿させることで、三元系酸化物触媒を合成した。各酸化物触媒について、77 Kでの窒素吸着等温線からBET比表面積を比較し、アルミニウム酸化物の添加により表面積が向上することを明らかにした。また、水素気流中での昇温還元プロファイルについて比較検討し、酸化銅の水素還元反応(CuO + H2 = Cu + H2O)の温度域が変化することを見出した。さらに、Cuの水素還元、酸化過程について酸素パルス試験を行い、Znの添加により酸化・還元特性が向上することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で鍵となる研究要素として銅、ニッケルなどの安価な遷移金属を活性成分とした触媒材料の開発である。初年度では、酸化銅への酸化アルミニウムの添加により触媒の高表面積化、酸化亜鉛の添加により酸化・還元特性の向上に成功した。この成果は当初の研究計画に照らし合わせても概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、高表面積、高い酸化還元特性を有する機能触媒の開発に成功している。今後は当初の研究計画通り、NaH2PO2を含む水溶液をモデル廃液とし、既に調製した触媒を用いてホスフィン酸の酸化反応を固-液反応系にて行い、触媒の酸化還元特性とホスフィン酸の酸化特性の相関性について明らかにする。さらに、実際のニッケルめっき廃液でのホスフィン酸の酸化反応試験を行い、本研究手法の妥当性について検討する。初年度においてリン酸、亜リン酸、次亜リン酸を精度良く定性・定量するシステムを導入しており、次年度にさらに研究を加速する予定である。
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Causes of Carryover |
テクニカルスタッフとして雇用した研究者が中国の大学の教員として採用され、予定期間よりも早く雇用契約を打ち切った。繰り越し金額については次年度において次亜リン酸の酸化プロセス開発を促進するために使用する。
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Research Products
(3 results)