2020 Fiscal Year Research-status Report
A hydrogen isotope separation method based on the Ludwig-Soret effect
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20K21867
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
木村 啓志 東海大学, 工学部, 准教授 (40533625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜多 理王 東海大学, マイクロ・ナノ研究開発センター, 教授 (90322700)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | トリチウム / マイクロ流体デバイス / ソレー効果 / 水素同位体 / 熱拡散現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、放射能汚染水に含まれるトリチウム水処理への応用を目指して、マイクロ流体工学と非平衡熱力学を融合させた革新的な水素同位体分離法の技術基盤構築を目的としている。具体論として、微小空間における熱拡散現象(ルードヴィッヒ・ソレー効果:以下、ソレー効果)によって場の溶液濃度を不均一化し、形成された濃淡溶液層を層流により分離回収可能なマイクロ流体デバイスを核とする水素同位体分離システムを構築する。これを用いてトリチウム水と軽水の分離効率最適化検討を実施し、本手法の有用性を検証する。本研究では、新規水素同位体分離手法として、マイクロ流体デバイス技術によって微小流路内での層流現象とソレー効果とを融合させた分離法を提案する。本研究期間内に、(1)水素同位体分離システム構築、(2)重水(D2O/HDO)-軽水(H2O)分離実験、(3)トリチウム水(T2O/HTO)-軽水(H2O)分離実験を段階的に実施し、本手法の有用性を検証する。 今年度は、微小空間でのソレー効果を実現するために、マイクロ流路上下にペルチェ素子を設置して高精度に温度制御することによって、微小流路内に安定的な熱勾配場を形成するマイクロ流体デバイスを作製し、水素同位体分離システムを構築した。マイクロ流体デバイスの設計については、有限要素法による熱伝導シミュレーションを実施して材料やサイズを設計するとともに、ソレー効果によって形成された濃淡溶液層を層流によって回収することができるように、流体シミュレーションを実施して最適な流路形状を設計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロ流体デバイスは、微細加工技術によって形成した微小流路構造の中で流体を取り扱うことができる小型装置である。微小流路内では、流体の慣性力よりも粘性力が支配的となるため、溶液が混ざり合わない層流が形成される。他方、ソレー効果は、混合流体において濃度勾配により誘起される物質の拡散と、温度勾配により誘起される物質の拡散が競合して成分分布が不均一となる現象である。この現象による物質の移動度は、分子の質量やサイズなどの物理的・化学的特性から複合的に決定される。 今年度は、微小空間でのソレー効果を実現するために、マイクロ流路上下にペルチェ素子を設置して高精度に温度制御することによって、微小流路内に安定的な熱勾配場を形成するマイクロ流体デバイスを作製し、水素同位体分離システムを構築した。マイクロ流体デバイスの設計については、有限要素法による熱伝導シミュレーションを実施して材料やサイズを設計するとともに、ソレー効果によって形成された濃淡溶液層を層流によって回収することができるように、流体シミュレーションを実施して最適な流路形状を設計した。初期のシステム評価として、熱拡散現象によって比較的濃度差がつきやすい、メチルベータシクロデキストリン溶液を利用して、分離実験を実施した。この結果、構築したシステムを用いて、熱泳動現象による物質分離が可能であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2020年度に構築したシステムを活用して、分離効率の最適化検討を実施する。一般的に熱泳動現象では、温度差依存性、中心温度依存性、濃度差依存性など、様々な条件によって分離挙動が変化することが知られている。そのため、高効率の物質分離を実現するためには、上記のような条件を中心に最適化検討が必要不可欠である。その際のサンプルとしては、まずは、扱いやすいメチルベータシクロデキストリン溶液を利用する。さらに、2021年度中には、ホット試験に進む前のコールド試験として、重水と軽水を用いた分離条件最適化検討を実施し、ホット試験に向けた知見を深める方針である。
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Causes of Carryover |
次年度使用分は、マイクロ流体デバイスの部材購入に利用する予定である。
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Research Products
(5 results)