2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of ultrahigh-sensitive silicon nanowire biosensor for simultaneous detection of various biomolecules in a single drop of body fluid
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20K21879
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
曾根 逸人 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (80344927)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大嶋 紀安 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30360514)
和泉 孝志 帝京平成大学, ヒューマンケア学部, 教授 (70232361)
張 慧 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (80794586)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | シリコンナノワイヤ / バイオセンサ / 超高感度検出 / 検査・診断システム / 医用システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電子線リソグラフィによりシリコンナノワイヤ(SiNW)素子を作製し、夾雑物のフィルタリング、多種類生体物質を各々特異的に結合できる表面修飾法を確立して、体液1滴に含まれる多種類の生体物質を同時検出可能なバイオセンサの創製を目指す。令和2年度は、コロナ禍に対する所属機関の方針で出張が制限されたことにより、東京大学の共同利用設備が使用できなかったため、当初計画を一部変更して以下の成果を得た。 (1) 多種生体分子同時検出のためのナノワイヤバイオセンサチップの設計:多種類の生体物質をその場で同時検出するために、センサチップ上に4つのSiNWセンサを配置して、マイクロ流路で1滴の体液を各センサへ同時に輸送供給する構造を設計した。フォトマスクの原画ファイルまで準備したので、令和3年度に出張可能となれば、東京大学の共同利用設備を用いてマスクを作製する予定である。 (2) ソフトプラズマエッチング装置を用いた電子線リソグラフィによるSiNW作製:従来のSiNWセンサの作製で使用した東京大学の高密度プラズマエッチング装置の代わりに、群馬大学のソフトプラズマエッチング装置を使用してSiNWの形成を試みた。CF4ガスを導入してガス流量、圧力、電流を最適化したところ、幅37 nmのSiNWが形成でき、FET特性も得られた。 (3) 低濃度IgGの検出とNW不純物濃度低減効果の検討:(2)で作製したSiNWセンサに表面修飾して、卵白アルブミン、イムノグロブリンG(IgG)の順に反応させ、SiNWの電流変化を測定した。IgG濃度6 aMから600 nMまで増加させたところ、600 aM以上で抵抗変化が得られた。また、不純物濃度が異なるほぼ同じ幅のSiNWセンサを用いてIgG測定を行ったところ、不純物濃度低減によって検出感度が向上する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が遅れている最大の理由は、前述のようにコロナ禍のため東京への出張ができず、東京大学の共同利用設備が使用できなかったことである。そのような状況下でも、群馬大学内で可能な研究を推進して、前述の成果を得た。 (1)では、4つのセンサに対して各々異なる表面修飾が施せる構造を設計したので、同時に4種類の反応が測定可能なる予定である。フォトリソグラフィで形成する電極と絶縁膜のフォトマスクを設計し、各マスクには電子線リソグラフィを含む3回の重ねリソグラフィ用のアライメントマークまで入れてある。東京大学への出張が可能になれば、この原画ファイルを用いてフォトマスクが作製できるので、可能な範囲の準備は完了している。 (2)では、従来の1センサ型SiNWセンサ用のフォトマスクを用いてセンサを作製した。SiNWはEB描画装置(JSM-6500-F/Beam Draw)でネガ型EBレジストのHSQ(DOW CORNING TORAY)を用いてレジストNWを形成後に、ソフトプラズマエッチング装置(SEDE-GEHL/CP, メイワフォーシス)にCF4を導入して加工した。幅37 nmのSiNWは形成できたが、従来の高密度プラズマエッチング装置で形成したサブ20 nm幅のSiNWは得られなかった。これはプラズマの密度が低いことが原因と考えている。 (3)では、濃度600 aMの低濃度IgGは検出できたが、従来のSiNWセンサでは、濃度6 aMのIgGも検出できたことから、NWの細線化が不十分であったと考える。しかし、不純物濃度の低減によって検出感度が向上したことは、今後SiNWの細線化と合わせることで、更なる高感度化が期待できる成果であった。 以上の理由より、研究が遅れている部分は多いが、進捗した部分があるので、総合的にはやや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、以下の3項目について研究を進める。 1) 多種生体分子同時検出のためのナノワイヤバイオセンサチップおよび測定システムの作製:令和2年度に設計した電極と絶縁層の原画ファイルを持って東京大学へ出張し、共同利用施設の電子線描画装置とマスク自動現像装置を用いてフォトマスクを作製する。それを用いて、n型のSilicon on insulator(SOI)基板上に群馬大学の両面マスクアライナと高周波スパッタリング装置を使用して電極を形成し、電子線描画装置を用いて電極間に架橋するレジストNWを形成する。その後、再度東京大学へ行き、高密度スパッタリング装置でレジストNWパターンをSOI基板のSi層に転写する。最後に電極部に絶縁層を形成してから、ダイシングして個々のセンサチップに切り分けて完成させる。なお、測定システムはLabVIEW(R3購入予定)を用いてセンサの電流電圧特性の多チャンネル同時測定を実現する。 2) 夾雑物フィルタリング機能を有するSiNWセンサへの体液輸送マイクロ流の作製:1)のセンサチップ上に形成された4つのSiNWへ体液を輸送しつつ夾雑物をフィルタリングできるマイクロ流路を作製する。直径100 nm程度のウイルスに対して、100~1000倍の大きさを持つ夾雑物を除去するため、マイクロ流路内に開口幅がμm幅のフィルタを形成する。フィルタ部分の精度を得るため、マイクロ流路はフォトリソグラフィで作製する予定である。 3) ウイルス等の検出対象物質の分解(エピトープ抽出)法の研究:検体中に含まれる極微量のウイルスをSiNWで検出するためには、ウイルスを分解してウイルス内部の抗原性を持つ核タンパクをエピトープ(抗体認識部位)として取り出す必要がある。ウイルスに対して酸、界面活性剤、プロテアーゼ等を供給して、分解の効果を調査する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため東京への出張ができず、東京大学の共同利用設備が使用できなかったため、予定していた出張費および設備利用料を使用しなかった。したがって、フォトマスクの作製ができず、新しく設計したセンサチップが作製できなかったため、それに必要な消耗品も使用しなかった。そのため、外部発表できる研究成果も得られず、学会発表のための出張費と学会参加費も支出しなかった。以上の結果、前述した群馬大学内で実施した研究に必要な物品費のみを使用した結果、予算を繰り越すこととなった。 次年度の使用計画は、東京に発令されている緊急事態宣言が解除され、所属機関の出張制限が解除された後に東京大学へ出張して、フォトマスクの作製、高密度プラズマエッチング装置等を用いたセンサチップ作製を行って、旅費、設備利用料を支出する。さらに、群馬大学内でのリソグラフィ、センサ評価を進めるため、物品費を支出する予定である。その結果、成果が得られれば学会発表を行うので、そのための旅費と学会参加費を支出する予定である。
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