2020 Fiscal Year Research-status Report
繰り返し応力集中を自動回避する超分子系生体組織接着剤の設計
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20K21881
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
由井 伸彦 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (70182665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有坂 慶紀 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (70590115)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | ポリロタキサン / 超分子 / 生体組織接着剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工血管などの生体材料と生体組織との吻合においてそれぞれの弾性率不一致(コンプライアンスミスマッチ)は大きな課題となっており、吻合部での血流の擾乱や繰り返し応力負荷は血栓形成や内膜肥厚ならびに吻合部の疲労破壊の原因となる。そこで本研究では、接着剤と生体組織間で共有結合を形成しながら、生体組織の伸縮・変形に伴う接着界面での応力集中を自動的に回避する全く新しい機構を有する超分子系生体組織接着剤の設計を目指す。2020年度は多数のα-シクロデキストリンの空洞部をポリエチレングリコール鎖が貫通しその両末端を嵩高いアダマンタン基で封鎖したポリロタキサンに、タンパク質や糖鎖と共有結合可能なアミノ基を修飾した超分子系生体組織接着剤を設計した。今回、α-シクロデキストリン1分子に対して0.1、0.2、0.4、0.5分子のアミノ基を修飾したポリロタキサンを合成した。このアミノ基修飾したポリロタキサンを任意の濃度で培地に添加し細胞培養を行ったが、顕著な細胞毒性は認められなかった。つぎにこのアミノ基修飾ポリロタキサンを光架橋したところ、α-シクロデキストリン1分子に対して0.4および0.5分子のアミノ基を修飾したポリロタキサンにおいてゲル化が確認された。アミノ基を修飾していないポリロタキサンにおいてそのようなゲル化が認められなかったことから、このポリロタキサンはアミノ基を介して架橋したことが予想される。このようなアミノ基修飾したポリロタキサンは生体組織との架橋も期待でき、新たな組織接着剤としての可能性を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織接着を目的としたポリロタキサンの設計および合成に成功したため
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Strategy for Future Research Activity |
合成したアミノ基修飾ポリロタキサンを用いて架橋時間や架橋濃度を検討する予定である。さらに作製したゲルの力学的な評価を行う。それらの評価を行った後、生体組織との接着性や接着強度について解析を行う予定である。最終的には、in vivoでの実験を通じて組織接着剤としての評価に取り組む。
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Causes of Carryover |
2020年度は、当初予定していた分子設計を変更し、より安全な組織接着が可能なポリロタキサン組織接着剤の設計に取り組んだ。そのため新たなポリロタキサンの設計および合成条件の検討を重点的に実施し、当初予定していた原料の大量合成を行わなかったため試薬や消耗品の購入を抑えることができた。2021年度は新たな合成条件をもとにポリロタキサンの大量合成および生体組織との接着評価を行うため、次年度使用額と合わせた助成金が必要となった。
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