2020 Fiscal Year Research-status Report
In Vitro3次元微小血管モデルによるがん細胞進化動力学
Project/Area Number |
20K21900
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
寺尾 京平 香川大学, 創造工学部, 准教授 (80467448)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロ流体デバイス / 1細胞解析 / 血中がん細胞 / 微小血管モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、血中がん細胞が血管狭窄部を通過した際に生じる遺伝子発現の変化と遺伝子変異の蓄積を解析する方法論を実現する。そのために、毛細血管の狭窄部を再現した3次元マイクロ構造を半導体微細加工技術によって作製し、ライブイメージングによる狭窄部通過前後の1細胞毎の計測を通じて、がん細胞と細胞核内の物理的挙動について可視化するとともに、狭窄部通過後のがん細胞を回収し、遺伝子発現・変異を評価することで細胞機能の変化を1細胞解像度で解析する。具体的には、以下の3つの要素に関して、マイクロナノテクノロジーを用いて、装置及び手法の開発に取り組んだ。 1)In Vitro微小血管狭窄部3次元モデルの開発:血管最小狭窄部である直径約6ミクロンの円形断面形状の再現を目標に加工技術の開発に取り組んだ。その結果、円形断面を安定に形成できる微細加工条件を確立した。 2)変形・損傷・修復挙動の計測:蛍光顕微鏡下に1)で作製したモデルを設置し、がん細胞をサンプルとして、狭窄部通過前後のがん細胞および細胞核の変形と形状回復に関するデータを物理刺激の履歴として取得するとともに、細胞内のクロマチン領域変化・DNA二本鎖切断を蛍光ライブイメージングにより可視化し、進化の駆動因子として評価する。本年度は細胞の形状変形と回復挙動の観察に取り組み、動態データの取得に成功した。今後、定量化と解析が課題である。 3)細胞の回収と遺伝子発現解析:狭窄部を通過した細胞群をマイクロ流体デバイスから回収し、特にがんの転移に関わる機能の評価を行う。遺伝子発現解析を安定に実施するため、多数の細胞を回収することができる、1)のモデルを並列に設置したハイスループットデバイスの開発に取り組み、細胞を使った評価実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度以下の、3つの要素に関して、マイクロナノテクノロジーを用いて、装置及び手法の開発に取り組み、当初の計画に沿って、おおむね順調に進展した。 1)In Vitro微小血管狭窄部3次元モデルの開発:血管最小狭窄部である直径約6ミクロンの円形断面形状の再現を目標に加工技術の開発に取り組んだ。その結果、円形断面を安定に形成できる微細加工条件を確立した。 2)変形・損傷・修復挙動の計測:蛍光顕微鏡下に1)で作製したモデルを設置し、がん細胞をサンプルとして、狭窄部通過前後のがん細胞および細胞核の変形と形状回復に関するデータを物理刺激の履歴として取得するとともに、細胞内のクロマチン領域変化・DNA二本鎖切断を蛍光ライブイメージングにより可視化し、進化の駆動因子として評価する。本年度は細胞の形状変形と回復挙動の観察に取り組み、動態データの取得に成功した。今後、定量化と解析が課題である。 3)細胞の回収と遺伝子発現解析:狭窄部を通過した細胞群をマイクロ流体デバイスから回収し、特にがんの転移に関わる機能の評価を行う。遺伝子発現解析を安定に実施するため、多数の細胞を回収することができる、1)のモデルを並列に設置したハイスループットデバイスの開発に取り組み、細胞を使った評価実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
3つの開発要素についてそれぞれ今後の研究課題を以下に示す。 1)In Vitro微小血管狭窄部3次元モデルの開発:円形断面を安定に形成できる微細加工条件を確立した。最小で6ミクロン径のモデルの形成に成功しており、血管再現としては十分なものと考えられるため、血管狭窄部周辺の流路構造の最適化を行い、より確実に細胞を捕捉し、観察を阻害しないマイクロ構造の形状検討を進め、観察実験効率を高める方針で開発を行う。 2)変形・損傷・修復挙動の計測:細胞動態データの取得に成功したことから今後、変形に関する定量化とデータ解析を実施する。また、核形状の挙動の蛍光観察に向けて、試薬、観察条件の検討を開始する。 3)細胞の回収と遺伝子発現解析:遺伝子発現解析を安定に実施するため、ハイスループットデバイスの開発を実施し、プロトタイプを評価した。今後、狭窄部を通過した細胞群をマイクロ流体デバイスから回収し、特にがんの転移に関わる機能の評価を行う。
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Causes of Carryover |
消耗品や装置について、当初、細胞を使った研究が想定したものより今年度は少なかったため、次年度使用額が発生した。その分次年度に集中して細胞実験に取り組む計画である。
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