2020 Fiscal Year Research-status Report
酸素生成・組織化時間制御機能を有する担体を導入した血管化培養組織の構築
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20K21902
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
梶原 稔尚 九州大学, 工学研究院, 教授 (10194747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水本 博 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90346817)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 組織工学 / バイオマテリアル / ハイドロゲル / 酸素生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の検討では、酸素生成法として、過酸化カルシウムに着目し、過酸化カルシウムの加水分解によって過酸化水素が生成され、さらに過酸化水素の分解によって酸素が生成される。この反応を利用し、過酸化カルシウムを分散させたハイドロゲル内での酸素の放出挙動を評価した。 コラーゲンゲル溶液と0.437 mM、1.04 mM、1.49 mMの濃度過酸化カルシウム溶液を混和し、ディッシュに添加しゲル化させた。その後、精製水を加え、室温雰囲気下で水中の酸素濃度を測定することにより、放出される酸素濃度の経時変化を測定した。 この結果、どの条件においても酸素の放出が確認された。酸素濃度は経時的に低下したが、少なくとも96時間目まで放出が確認された。 そこで次にこの過酸化カルシウム含有コラーゲンゲルを用いてHepG2の培養を行なった。培養は通常酸素(20%)及び低酸素(2%)雰囲気下の2つの条件で行なった。 この結果、低酸素雰囲気下での過酸化カルシウム含有コラーゲンを用いた培養での培養96時間目の細胞数は過酸化カルシウム不含の条件と比較して多く、その値は過酸化カルシウム不含での通常酸素雰囲気下と同等であることが示された。この結果、ゲルから放出された酸素が低酸素雰囲気下でのHepG2の増殖をサポートしたと考えられる。 一方、中間生成物である過酸化水素は細胞傷害性を示す。このため、過酸化水素濃度の経時変化についても評価を行った。この結果、培養初期においては細胞傷害性を示す濃度で過酸化水素が存在している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過酸化カルシウムの加水分解によって最終的に生成される酸素を利用する方法に着目し、ゲルからの酸素放出量の測定、ならびに動物細胞を用いた低酸素雰囲気下での増殖挙動評価を行った。その結果、96時間目までの酸素の放出、低酸素雰囲気下における旺盛な細胞増殖を確認した。このため、進捗状況は概ね良好であると考えられる。中間生成物である過酸化水素の蓄積による細胞への傷害性が懸念されたが、本検討では過酸化水素の分解反応としてカタラーゼの添加についても検討を行っており、その結果、培養初期の細胞増殖開始にタイムラグは発生するものの、細胞が死滅するほどの細胞傷害性は観察されておらず、順調に対策できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討により、酸素放出が可能なハイドロゲルが調製できたため、このハイドロゲルを用いた培養組織の構築を行う。具体的には申請者ら独自の手法であるスフェロイドを用いたボトムアップ法を用いる。スフェロイドを積み上げる際に、その表面をハイドロゲルで塗布し、スフェロイド同士の融合によって培養組織の形成誘導を行う、その際に酸素放出能の有無により、培養組織内部での低酸素領域に変化が生じるかどうか確認を行う。 一方、本年度の検討による酸素放出法では、初期に大量の酸素が放出される初期バーストが避けられず、また初期の過酸化水素濃度が細胞傷害性を示す可能性がある。そのため、この初期バーストを抑える検討が必要である。具体的には初期バースト後のゲルの利用、過酸化カルシウムの包括による徐放速度の制御について検討する予定である。
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Research Products
(3 results)