2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21911
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
清水 達也 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40318100)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 組織工学 / 藻類 / 光合成 / 筋組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、微細藻類を内包することにより光合成能を有した立体細胞組織を構築することである。これにより未来の再生医療における移植用組織の作製や、義手・義足の開発、アクチュエータの開発等において基盤となる組織工学技術の確立を目指す。当該年度においては、厚み0.3 mm以上の藻類含有筋組織の作製・培養条件を検討した。動物細胞としてはマウス筋芽細胞株(C2C12)を用い、藻類としては前年度までに選別した3種の藻類株に加えて、新たな藻類種についても検討を行った。また立体組織の作製には遠心力を利用した組織作製法を利用し、C2C12と種々の藻類種を様々な混合比で配合した立体組織を作製した。これを光照射条件下で数日間培養し、組織学的解析および培養液成分解析による評価をおこなった。様々な条件を試みたが、藻類含有立体組織の厚みが0.3 mm以上になると、立体組織内部における壊死が著しく促進されてしまうという結果となった。この結果は、筋芽細胞株であるC2C12の代謝活性が他の細胞種と比較して高いことが一因となっていると推測される。また光照射は光合成を誘起し低酸素状態を改善する一方で、光の照射強度によっては逆に動物細胞の傷害を強めてしまう可能性も明らかとなってきた。この原因としては、光合成による藻類からの過度な酸素発生が動物細胞の酸化傷害を引き起こしてしまっている可能性が推測される。この結果を踏まえ、培養液中の溶存酸素濃度に応じて照射光をフィードバック制御することにより、光の照射強度を最適化するためのシステムを開発した。また作製した筋組織の収縮力を計測するための装置開発をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年次における研究項目は、②光照射フィードバック制御による溶存酸素濃度制御培養システムの開発、③藻類含有筋組織作製法の開発、④藻類含有筋組織の収縮機能評価、⑤グルコース分泌藻類の開発、の4項目である。②についてはシステムの開発を達成した。③については、組織作製法の開発は達成しているが、目標である厚み0.3 mm以上の立体組織の長期培養維持を達成できていない。④については収縮機能を評価する装置の開発は概ね達成しているが、筋芽細胞から作製した藻類含有立体組織を、筋収縮能が発現する程に分化成熟させることができていない。⑤については情報収集に現状留まっており、具体的な実験への着手はこれからという段階である。以上のように本研究課題は当初の計画よりやや遅れており、その大きな理由としては、厚み0.3 mm以上の藻類含有組織における内部壊死が当初予想より著しいものであったことが挙げられ、次年度以降の大きな課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究項目は、③藻類含有筋組織作製法の開発、④藻類含有筋組織の収縮機能評価、⑤グルコース分泌藻類の開発、の3項目である。③については、目標である厚み0.3 mm以上の立体組織の長期培養達成に向けて、さらなる条件検討に加え新たなアプローチも検討していく。④については、培養維持が可能な厚み0.3 mm未満の藻類含有筋組織において、収縮能を発現するまでの分化成熟促進に着手していく。⑤については、藻類の遺伝子改変や突然変異誘導法の検討に加え、より現実的に可能な手法として藻類からのグルコース遊離を引き起こす分解酵素の利用も検討し、本コンセプトの可能性を示す第一段階の達成を目指す。
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