2022 Fiscal Year Research-status Report
転移性骨腫瘍治療を指向した機能性ナノカーボン粒子の創製
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20K21914
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 真紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00568925)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 転移性骨腫瘍 / ナノカーボン / ビスホスホネート / リン酸カルシウム / 破骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
転移性骨腫瘍では、骨に到達したがん細胞が破骨細胞を活性化して増殖することで骨の損傷が進み、患者のQOLを著しく低下させる。本研究では、患部において破骨細胞の活性を低下させ、骨の再生を促進することのできる転移性骨腫瘍治療システムの創製のために、それ自身も破骨細胞抑制効果を有すると考えられるナノカーボンに、治療薬などを搭載(担持)した複合ナノ粒子の作製と評価を行う。 昨年度までに、カーボンナノホーン、リン酸カルシウム、ビスホスホネート(破骨細胞抑制剤)の3成分からなる複合ナノ粒子を作製し、破骨細胞の前駆細胞であるマウスマクロファージ様細胞(RAW264.7)、ならびに、RAW264.7を分化させて得た破骨細胞に対して優れた細胞生存率抑制効果を示すことを確認した。今年度は、3種類のビスホスホネート(イバンドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート)をそれぞれ担持した複合ナノ粒子を用いて、RAW264.7に対して異なる細胞生存率抑制効果を示す要因について検証を行った。 高粒子濃度条件での細胞生存率抑制効果は、パミドロネート担持粒子≒ゾレドロネート担持粒子>イバンドロネート担持粒子の順であった。ビスホスホネート単体の細胞生存率抑制効果が、パミドロネート≒ゾレドロネート>イバンドロネートの順であったことから、細胞内に放出されたビスホスホネートが細胞生存率の抑制に寄与したと考えられる。また、細胞への取込量は、パミドロネート担持粒子>ゾレドロネート担持粒子>イバンドロネート担持粒子の順であり、細胞生存率抑制効果と相関していた。粒子が多く細胞内に取り込まれることで、細胞内に放出されるビスホスホネート量が多くなったと考えられた。以上より、複合ナノ粒子に担持されるビスホスホネートの種類の違いが、複合ナノ粒子の細胞取込量に影響を与え、さらには、細胞生存率抑制効果にも影響を与えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目は、複合ナノ粒子に担持される治療薬(破骨細胞抑制剤)の種類によって、異なる細胞生存率抑制効果を示す要因について主に検証し、細胞取込量との関係などについて明らかにすることができた。また、これらの成果について、学術論文誌や学会で発表するなど、おおむね順調に進展していると言える。一方で、本複合ナノ粒子が破骨細胞への分化に与える影響を検討することで、より精緻に本研究の目的を達成できると考え、期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
破骨細胞への分化に与える影響の解析:RAW264.7を破骨細胞へ分化させる際に複合ナノ粒子を共存させ、破骨細胞への分化に複合ナノ粒子が与える影響について解析する。
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Causes of Carryover |
新たに検討すべき課題(破骨細胞への分化に与える影響の解析)を円滑に遂行するため、次年度の実験補助者(ルーティーン作業の一部を担当)の雇用期間を延長する必要があり、人件費を次年度に繰り越す必要があった。繰越金は、人件費や当該実験を行うための物品費などとして使用する。
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Research Products
(2 results)