2021 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における市民的公共思想の展開―高等教育・宗教・社会事業の連携に注目して
Project/Area Number |
20K21917
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小嶋 翔 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (80880921)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 旧制高等学校 / プロテスタンティズム / ユニテリアニズム / 福音主義 / 社会事業 / セツルメント / 社会主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
(A)主たる考察対象の旧制第二高等学校・忠愛之友倶楽部(学生YMCA)の草創期について、仙台の近代教育史、キリスト教思想史、地域史(災害など)といった周辺事項に目配りしながら、その活動実態や思想傾向を分析する、(B)関係する周辺的事項について幅広く思想研究を行う、という二方面で研究を進めた。 (A)の成果としては(1)忠愛之友倶楽部は仙台という地域的要因により、同時期(明治20年代初頭)に活動を開始した第一高等学校(東京)学生YMCAのような上級学校(東京帝大など)との連携ができずに活動の発展が遅れた、(2)そのため仙台のキリスト教私学教育機関の外国人宣教師に指導を請うた他、帝国大学に進学する有力なOBが増えた後は中央から著名な宣教師を招いた。結果、人格面で在仙外国人宣教師の影響を継続的に受ける一方、思想面では中央のキリスト教界の流行(特に自由主義神学の流行)に左右されやすい傾向があった、(3)結論として、青年思想形成の場としての忠愛之友倶楽部は、中央のキリスト教界からの影響に加え、在仙外国人宣教師の伝道を通じた地域貢献や教育・福祉活動の取り組みからの実際的感化も大きいといった、多層的な環境を持っていたことが明らかになった。 以上は、まず明治期青年層におけるキリスト教思想の事例研究として重要である。特に忠愛之友倶楽部が仙台という地域的要因により特殊な発展をしたことは、日本におけるキリスト教思想史と地域史が有意に交差した事例として注目すべきと考える。社会実践を重視しつつ、その思想が具体的な地域特性を帯びた形で展開したことは、草創期忠愛之友倶楽部がキリスト教信仰を通じた公共思想の涵養の場となっていたものと理解できよう。 また(B)については、草創期忠愛之友倶楽部の思想的背景の一つと考えられるキリスト教社会主義について、特にそのイデオローグである安部磯雄の思想の公共的側面を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、予定していた資料調査で行えていない部分がある。また、同様の理由で計画していた研究発表の機会を得るのが遅れたことなどから、論文化する作業が当初の見込みほど進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「研究実績の概要」に記した成果については、すでに学会での報告を行い、一定の検証をすることができた。そこでの議論も踏まえつつ、今後は論文化する作業を進めたい。また、補助事業期間延長の承認を得ることができたので、これまでの研究から明らかになった重要事項についての調査をより深く行い、成果に反映させたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、参加を予定していた学会がオンライン開催に切り替わったこと、また遠方での資料調査を見合わせたことで、予算執行ができなかったことによる。今年度は期間延長として、引き続き同様な学会参加や資料調査、あるいは研究資料、文献の購入を計画している。
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Research Products
(3 results)