2021 Fiscal Year Research-status Report
Asianism and Eschatology in Takeuchi Yoshimi
Project/Area Number |
20K21918
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
王 欽 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80875683)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
|
Keywords | 竹内好 / 中国近代文学 / 終末観 / アジア / 魯迅 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は引き続き竹内好論について研究を進めて、論文として成果を整えている。いまのところ、中国語で書かれた二本の論文――「竹内好の憲法感覚」と「竹内好の終末観」――を中国国内の学術誌で掲載される予定である(査読あり)。前者においては、申請者は竹内好の『わたしたちの憲法感覚』など、1950年代に書かれた一連の論考を主なテクストとして精読し、竹内好の憲法に対する理解を練り上げようとするものである。竹内好が憲法に対して違和感を感じているのは、戦後憲法がいわゆる「外来的」なものであるためではなく、よそよそしいものとして民衆の意識に浸っていないためである。すると、竹内好にとっても、われわれにとっても、戦後憲法を守るということは、結局のところ、憲法制定者の意図を守るのではなく、憲法の文字通りの意味を理解するのでもなく、デモなどの民衆的政治参与において憲法を活かしていくことであり、憲法の未来に向けてのポテンシャルを守ることである。 それに関連して、「竹内好の終末観」という論文は、以上の政治的ポテンシャルの原点について議論を進めている。竹内好においては、「終末観」が決してキリスト教のドクトリンではなく、ナショナリズムや民衆の力を論じるとき啓発に満ちたパースペクティブである。キリスト教の響きが絶えないこの言葉を洗い出すことによって、竹内好は民衆における政治形式のエネルギーを戦後日本社会に読み取ろうとしているのである。彼によると、終末観に対峙しているパースペクティブは、近代ヨーロッパにおける理性であり、実体的な思考である。 一方で、2021年度Aセメには、東京大学東アジア藝文書院が主催する「学術フロンティア講義」で竹内好の憲法論に関して講演した。授業それ自体は書籍化される途中であるので、来年度に出版される見込みとなる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の研究は概ね英語論文(1本)と中国語論文(2本)の形で整っている。予想した国際学術会議は、コロナ禍の状況が芳ばしくないせいで実現しにくくなってしまったが、本プロジェクトの支援が終わってからでも、引き続きシンポジウムの開催を積極的に検討しながら調整していくつもりである。
|
Strategy for Future Research Activity |
竹内好のアジア論と魯迅研究に緊密につながっているものとして、魯迅論に関する原稿を整えている。今年中に計16万字以上の原稿を出版社に出す予定である。
|
Causes of Carryover |
会議を行う準備のため、そして文献の整いのため、次年度にも使用額が生じる。
|