2021 Fiscal Year Research-status Report
製本術の工程分析に関する基礎的研究:東京大学所蔵「英国書史関係集書」を対象として
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20K21919
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野村 悠里 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (70770288)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 東京帝国大学 / 英国書史関係集書 / 関東大震災 / 製本 / 装幀 / 技術 / 工程 / 職人 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京大学所蔵「英国書史関係集書」は、関東大震災の図書館復興支援として英国から寄贈された15世紀から20世紀の洋書コレクションである。英国政府からの贈呈にあたっては展覧会が開催され、「英国書史関係集書」の書誌情報を一覧に目録化した 「Exhibition of Books (London, 1929)」が刊行されている。副題は「Illustrative of the History of English Printing and Book Production」であり、英国における幅広い年代の出版文化を伝える選定となっている。英国政府の寄贈時にコレクションの象徴的シンボルとなったのはダヴズ製本所による装幀で、ウィリアム・モリスによる『チョーサー作品集』であった。本書は大型の木製箱とともに寄贈されたが、東京大学文学部・大学院講義「文化資源保存修復論―書物のコンサベーション」においても保存状態を取り上げ、本の見学会を実施した。本研究の二年にわたる調査の結果、製本技術史および書物の保存修復研究上、重要な職人や製本工房の作品が多数含まれていることが明らかになっており、印刷術ばかりでなく製本術の変遷を示す総合的なコレクションであることが解明されつつある。第二年度のコレクション調査については、初年度と同様、20世紀から出版年を遡るかたちで実物調査に実施した。各部分について画像撮影を行い、データベースを作成した上で製本技術の工程について分析と比較を進めている。特に対象としたのは17世紀および18世紀のコレクションで、製本の構造的特徴に関するデータを収集した。次年度も引き続き、15、16世紀のコレクションについて実物調査を継続し、全体の分析と研究の深化を図ることを目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第二年度も感染症の拡大を勘案しながら調査せざるをえない状況にあったが、17世紀および18世紀のコレクションを中心にデータの収集を進めることができた。コレクションの実物調査を主軸としているため、感染症の影響を受けざるをえないが、次年度も継続して製本術の工程分析に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
15世紀および16世紀を対象として重点的に取り組み、コレクション全体の調査を完遂することを目標とする。引き続きデータベースでの分析を進め、復興支援として寄贈されたコレクションの製本史上の意義をまとめることを目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍ではあるが、15世紀から20世紀の刊本全てについて調査を完遂することを目標としているため、研究期間を延長することにした。次年度も研究を継続し、コレクション全体を精査するための費用として使用する。
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Research Products
(3 results)