2021 Fiscal Year Research-status Report
「遊行上人縁起絵」諸本の基礎的研究:転写系統の分類と祖本の復元的考察
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20K21930
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
本多 康子 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (80881979)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 縁起絵巻 / 高僧伝 / 模本 / 時宗(時衆) / 転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、2020年度に引き続き中近世に制作された遊行上人縁起絵諸本調査および成果発表を行う予定だったが、新型コロナウィルス感染状況により、当該年度に予定していた海外調査および国内調査の一部については実施できなかった。そのため、成果発表としての研究発表および研究論文執筆に遅延が生じている。 1、焼失した藤澤古縁起本(旧国宝本)の近世転写本の調査を行った。特に東京国立博物館所蔵の遊行上人縁起絵模本については、一場面ないし複数場面ごとに複数の狩野派絵師による臨模がなされており、賦彩に関する指示書きが一部残っていることから、詳細な模本制作の姿勢が看て取れる。このことから、藤澤古縁起本(旧国宝本)含め遊行上人縁起絵諸本の一部は、狩野派の古絵巻学習・模写の対象として、一定程度の知名度を有していたことが推察できる。中世における各時宗寺院による遊行上人縁起絵制作は、一遍・他阿二祖の事績を顕彰し教化する目的があったが、近世における模本制作はその制作背景および方法は異なる。近年、狩野派による模写・模本制作に関する研究が進められており、それらの研究成果も鑑みて近世転写の諸相を掘り下げる必要がある。 2、藤田美術館所蔵の一遍上人画像(14世紀、南北朝時代)および近世の一遍聖絵(12巻本)模本を熟覧・調査を行った。一遍上人画像については、画風から遊行寺本の同種画像にさかのぼり制作されたと考えられる。また、一遍聖絵(12巻本)模本については、近世転写本の数少ない一例である。遊行上人縁起絵と異なり、一遍聖絵は中近世を通して諸本制作はあまり行われておらず現存作例も限定的である。時宗における二つの祖師絵伝制作の背景を追究するうえで貴重な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に引き続き、新型コロナウィルス感染状況により、海外調査および国内調査の一部については実施できず、当初の予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
海外調査および国内調査については、今後の渡航状況等を鑑みて可能な限り実施を試み、作品の実地調査および成果発表に努めたい。 2021年度に実施できなかった遊行上人縁起絵調査を継続すると同時に、高精細画像データ等の取得など、調査の代替が可能な資料収集についても積極的に渉猟していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染状況拡大により、当初計画していた調査等が実施できなかったため。
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