2020 Fiscal Year Research-status Report
近世期仮名遣い研究史における『和字正濫鈔』の再定置
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20K21954
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
久田 行雄 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (60883189)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 仮名遣い / 契沖 / 和字正濫鈔 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は契沖『和字正濫鈔』(元禄8年〈1695〉刊行)の学問的成果を仮名遣い書における学問の連続性という観点から位置づけ直すことを目標とする。 2020年度はその準備として『和字正濫鈔』に記された語や語釈をデータ化し分析を行った。『和字正濫鈔』に記載された語やそれらの語に付された語釈・出典をデータ入力し、そのデータの入力ミスや読み誤りを訂正する作業を行いながら、『和字正濫鈔』の分析を行った。その結果、『和字正濫鈔』には2040語が掲載されているが、これは述べ語数であり、異なり語数で見ると1935語であることを明らかにした。また『和字正濫鈔』は古代の文献に基づいて仮名遣いを提示したことで学術的に評価されてきたが、本調査により2040語のうち835語(約40%)に出典が明記されていないことを明らかにした。今後、これらの語については先行する仮名遣い書との対照作業を行い、『和字正濫鈔』の編集過程について具体的に明らかにしていく予定である。 また、『和字正濫鈔』は仮名遣いの典拠として『和名類聚抄』を最も多く使用しているが、典拠として使用された『和名類聚抄』が実際にどの本であったかについては詳細な調査が行われていなかった。そこで、江戸時代に刊行されていた元和古活字版『和名類聚抄』と寛文7年版『和名類聚抄』と『和字正濫鈔』を対照させたところ、『和字正濫鈔』は寛文7年版に拠っている例が多く見られることを明らかにし、寛文7年版によっている可能性が高いことを指摘した。もっとも、寛文7年版を典拠とするだけでは説明できない例も存在し、『和字正濫鈔』の編纂過程については今後も検討していく。 これらの成果は「和字正濫鈔における典拠小考」(『国語論集』18、2021年3月24日発行)として公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、データの確認および分析を行えている。『和字正濫鈔』に先行する仮名遣い書に関してもデータ作成を進めており、次年度に向けての準備は順調に進んでいる。 また当初の計画にはなかったが、『和字正濫鈔』において典拠として多く使用されている『日本書紀』や『万葉集』についても、『和名類聚抄』と同様の調査を行っており、次年度に向けての準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画通り、『和字正濫鈔』に記載された語を先行する仮名遣い書と比較する作業を行う。『仮名文字遣』(慶長版本)や荒木田盛徴『類字仮名遣』(寛文6年〈1666〉刊)、『初心仮名遣』(元禄4年〈1691〉刊)を対象として、『和字正濫鈔』に記載された語がこれらの書物に掲載されているかどうか、掲載されている場合には語の表記が合致しているか、語釈などに共通している部分があるかどうかなどを明らかにする。これらの作業を通して、『和字正濫鈔』の学問的成果の再定置を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度はデータ入力・確認作業が中心となり、先行研究や関連分野に関する調査への着手が遅れてしまったため次年度使用額が生じた。翌年度においては、2020年度に行えなかった分の先行研究や関連分野に関する調査を行い、関連書籍の購入を行う予定である。
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Research Products
(1 results)