2020 Fiscal Year Research-status Report
敬語表現の選択:コーパスを用いた一般化階層ベイズモデリングの理論言語学への統合
Project/Area Number |
20K21957
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 彬尭 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 講師 (70879965)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 一般化階層ベイズ / コーパス言語学 / 言語選択 / 尊敬語構文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで言語学ではほとんど使われてこなかった一般化階層ベイズと呼ばれる統計手法を、言語データに応用させるモデルケースを打ち立てることを目標としている。この手法は、複数の選択肢があるときにどのような要因でその選択がなされるのかという問いに有効であり、本研究では尊敬語構文の選択を主たる研究事例に据えている。 所期の目的を達成するために、本研究では二つのフェーズを設けている。第一フェーズは、データを統計に解析し、その結果を吟味する段階であり、第二フェーズはその得られた結果を、これまでの言語理論と突き合わせ、尊敬語や言語選択のこれまでの知見を発展させる段階である。 支援がスタートした2020年9月から支援が終了する2022年3月までには15か月の期間が存在し、現在はその8か月が終了した中間段階にある。当初の予定通り、現在は第一フェーズがおおよそ終了した地点にあり、第二フェーズへの移行を進めている段階である。第一フェーズの研究業績は以下の通りである。 ・国際学会での発表/国内ワークショップにおける発表/紀要論文の投稿 第二フェーズについては現在分析を進めているところであり、未だ世に問うたものは存在しないが、その下地となる理論研究として、世界各国語の敬語構文のバリエーションを調査・分析する機会を得た。その結果、次の研究が進んでいる。 ・国際的に権威のあるハンドブックの章の執筆(投稿済み)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の統計解析には、高性能のパソコンの利用が欠かせず、昨年度いただいた支援によりデータ分析用に一台購入を行った。この結果、解析が前進し、学会やワークショップなどでその成果を発表している。ここまでは、予定通りである。
また、当初の予定にはなかった関連する仕事として、国際的に権威のあるハンドブックから敬語についてのバリエーションを執筆する依頼を受けた。日本語に限らず、世界各国の敬語の広がりについて調査・分析を行ったもので2021年3月にその初稿を挙げることができた。これは、本プロジェクトにおいて、申請時に意図していた日本語の尊敬語のバリエーションを超えて、語族の異なる諸言語のバリエーションまで射程に含める非常に有意義かつタイムリーな仕事となり、結果として当初の計画以上に研究は進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
支援の後半は、得られた統計解析の結果を、理論言語学の枠組みでとらえるという第二フェーズに移行し、同時に、この一般化階層ベイズの手法をより多くの人に広めるワークショップの開催などを実施するという当初の予定に大幅な変更はない。 後者のワークショップについては、複雑な技術習得を踏まえると、理想的には対面が望ましいことは言うまでもないが、Covid-19の感染拡大状況を踏まえると、何らかのOnline形式での実施がふさわしいであろう。現在、どのようなツール、形態が望ましいのか模索中の段階であり、8月、9月頃に開催ができるよう試行錯誤を続けていく。
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Causes of Carryover |
主に統計および言語学の先行研究に関する書籍を購入するために利用する。
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