2021 Fiscal Year Research-status Report
敬語表現の選択:コーパスを用いた一般化階層ベイズモデリングの理論言語学への統合
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20K21957
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 彬尭 大阪大学, 言語文化研究科, 講師 (70879965)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 定量的言語研究 / ベイズ統計学 / 一般化線形混合効果モデル / 尊敬語 / バリエーション / 丁寧語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①大規模コーパスを用いた統計モデリングから尊敬語構文の使い分けの傾向を探り、②「なぜ複数の尊敬語表現が競合するのか」という点について、分散形態論という枠組みで理論化を図ることであった。 日本語の謙譲語や諸外国語の尊敬語とは異なり、日本語の尊敬語は、複数の構文選択が可能である。例えば、a. 到着される, b. 到着なさる, c. ご到着される, d. ご到着なさる, e. ご到着になる、などである。どのような要因でどの表現が使用されるのかという点を、統計的な推論で明らかにし、それを分散形態論で理論化することを目指してきた。 本研究の一本目の柱である大規模コーパスを用いた統計解析においては、「尊敬語構文」の選択だけでなく、「丁寧語構文」の使い分け傾向の分析へと研究対象を発展させることができ、当初の予定よりも踏み込んだ研究を展開することができた。他方、分散形態論の枠組みでの理論化という二本目の柱については、現在、論文が査読段階で、令和3年度以内での出版はかなわず、次年度に持ち越すこととなった。 このプロジェクト中に7回の国際学会での発表と、1回の国内学会での発表を行い、3本の論文も世に問うことができ、順調な研究が行われたと言える。 また、複数の招待講演や、国際的なハンドブックWiley社から、世界の敬語に関する40ページ以上におよぶ章の執筆の依頼を受け、この仕事も成功裏に終えることができたことで(出版は、今年、あるいは来年となる)、定量分析の実施だけではなく、対象である敬語分析においても、国際的なリーダーシップを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
このプロジェクト中に7回の国際学会での発表と、1回の国内学会での発表を行い、3本の論文も世に問うことができ、順調な研究が行われたと言える。一方で、本支援期間である一年半の間での実現を目指していた国際誌における定量的統計分析と理論言語学の統合を実現させた論文は、査読中で年度をまたぐことになってしまい、その点で一部将来に成果を持ち越すこととなってしまった。一方で当初予定していたよりも、高度な統計モデルを分析に取り入れることができた点で、大きな研究の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
査読中の論文については、これを世に出し、これを範とし、定量的、定性的言語研究の統合研究を引き続き、より高度で洗練された統計手法の応用を実現させていく。分析対象も、現代の尊敬語、丁寧語だけではなく、補文標識やそれらの通時的発達などに広げ、より広範囲の現象への応用を行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、当初計画していたほど多くの国際学会への参加を見送らざるを得なくなった(国内外の学会において、オンラインのものに限って応募をしたため)。このため、応用的統計研究の有用性の言語学を専門とする研究者への宣伝という目標は、限定的なものとなってしまった。次年度は、この目標を達成するために、学会発表を通じて、継続した本研究の有用性を伝えていきたい。また、国際誌へ投稿している論文が現在査読中であるためこれを世に問い、達成させることを目指す。
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Research Products
(8 results)