2021 Fiscal Year Research-status Report
敗戦前後の「日本浪曼派」周縁の文学的営為に関する研究：『文藝世紀』を視座として
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20K21958
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| Research Institution | Kure National College of Technology |
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Principal Investigator |
福田 涼 呉工業高等専門学校, 人文社会系分野, 助教 (10880239)
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| Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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| Keywords | 三島由紀夫 / 木山捷平 / 太宰治 / 日本浪曼派 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
敗戦前後における「日本浪曼派」の動向と、それに関わる諸状況を明らかにすべく、同派の近傍の雑誌である『文藝世紀』（中河與一編輯）に関係が深い作家の文業について、調査・分析を進めた。令和3年度の主たる研究実績は、以下のとおりである。
（1）『文藝世紀』に掲載された太宰治の小説「不審庵」（1943年）について分析を行った。今年度は当該作品に関する考察を、より広い文脈に布置し直すべく、太宰や当該時期の文壇に関する主だった先行研究を再整理した。こうした作業を基に、現在、本作に関する学術論文を構想している（なお「富嶽百景」（1940年）についても、同様の作業を行っている）。
（2）三島由紀夫と『文藝世紀』の関わりについて、「中世」（1945～1946年）を中心的な素材として考察を進めた。その過程で、当該時期の三島の文学的動向を色濃く反映した、学界では未紹介の資料を調査する機会が得られた。目下、当該資料に関する分析を、最優先の研究課題として推進している。
（3）木山捷平「苦いお茶」（1962年）、および三島由紀夫「孔雀」（1965年）に関する解説文を執筆した。木山については、習作時代に太宰らと雑誌『海豹』を創刊したことで知られ、雑誌『日本浪曼派』にも同人として加わっている。三島の晩年に著された「孔雀」に関しては、三島の「日本浪曼派」からの訣別の書たる「夜の車」（1944年）や、ロマン派への回帰の兆候を示すとされる「美しい星」（1962年）との関連について論述を行った。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「研究実績の概要」で示したとおり、（2）三島由紀夫に関する新資料の調査・分析を実施し、また（3）木山捷平「苦いお茶」（1962年）および三島「孔雀」（1965年）に関する解説文を執筆した点では、一定の成果を収め得たと見做せよう。しかしこれらの作業によって、当初の研究計画を思うように進められていないことも事実であり、とりわけ昨年度中に執筆・投稿を完了させる予定であった（1）太宰治「不審庵」（1943年）に関する学術論文が、2022年5月現在においても完成していないことは遺憾の極みである。今後は研究計画の遅れを取り戻すべく、一層研究に集中・尽力するとともに、（2）の新資料についても、年度内に学術誌等で紹介できるよう作業を進めてゆく所存である。
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| Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、主に以下の作業を進めてゆく予定である。
（1）太宰治「不審庵」（1943年）に関する調査・分析を完了させる。
（2）三島由紀夫に関する新資料について、引き続き調査・分析を行う。コロナ禍の影響により、令和3年度も首都圏等での資料調査が実施し得なかったが、令和4年度については国会図書館オンラインの「個人向けデジタル化資料送信サービス」も活用しながら、作業を加速させてゆく所存である。
（3）高見順『今ひとたびの』（1946年）を分析する。大まかな筋書きや、細部の挿話を本作と共有している中河與一『天の夕顔』（1938年）とも比較を行いながら、本作における「転向者」の描かれ方や、高見と「日本浪曼派」の関係性について、多角的に考察する。
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| Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、令和3年度についても首都圏での資料調査や、三島由紀夫文学館（山梨県山中湖村）での原稿調査を実施し得なかったことに因る。令和4年度についても、コロナ禍の状況次第ではあるが、勤務先の夏季休業期間等を利用し、上述の調査を集中的に実施する予定である。
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