2020 Fiscal Year Research-status Report
英国ルネサンス期における女性の創作活動の多様性と意義
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20K21966
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
石渕 理恵子 東京女子大学, 人間科学研究科, 研究員 (80881507)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 英国ルネサンス期文学・文化 / シェイクスピア / 女性作家 / 散文ロマンス / 演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は3部構成であり、2020年度は第1部として以下の研究を行った。17世紀全般の英国女性作家の創作活動を、Helen Hackett, Helen Cooper, Alison Findlay, Marta Straznicky等による先行文献を踏まえ、散文ロマンス等の文学ジャンル、演劇上演、手稿回覧、出版等の点から考察した。散文ロマンスについては、17世紀中期以降に執筆されたMargaret CavendishのThe Blazing World(1666, 1668)やHester PulterのThe Unfortunate Florinda(1655-1662)等の分析を行なった。日本では研究があまり進んでいないPulterの作品については、小説の発展に影響を与え当時英国で流行していたフランス散文ロマンスとの類似性が見られることが判明した。当時の英国女性と演劇上演の多様な関わりについて第一次資料(翻訳劇、手紙、詩集等)の収集・分析も行なった。Edward Deringによるシェイクスピア劇Henry IV Part1とPart2の翻案(1622-24)、17世紀初期を代表する女性作家Mary Sidney Wrothの祖母と親戚関係にあったJane Lumleyが英国女性として初めて英訳したエウリピデスの悲劇Iphigenia at Aulis (ca 1554)、Katherine Philipsが翻訳したフランスのコルネイユによる悲劇Pompey(1663年にダブリンの商業劇場で英国女性による翻訳劇として初上演)等の考察も行った。「英国ルネサンス期女性作家と散文ロマンス」という点で上述の研究に深く関わる拙論文が、2021年3月に学術書に掲載された。国際的な学術雑誌に投稿予定の英語論文1本の草稿の加筆・改訂も行えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3部構成であり、そのうち第1部の調査、考察をおおむね当初の計画通り行うことができた。「研究実績の概要」記載の通り、研究論文1本が学術書に掲載され、英語論文1本の加筆・改訂も行うことができた。2021年8月にオンラインで開催される‘British Shakespeare Association’の学会セミナーへも参加が決定している。尚、第2部第1期として2021年2月から3月に実施を予定していた大英図書館や米フォルジャー・シェイクスピア図書館(Folger Shakespeare Library)等での第一次資料の収集・調査はコロナウイルス感染症拡大の影響で延期となり、日本で入手困難な資料の調査・分析が2021年度以降に持ち越しとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の取りまとめ期間として、下記の通り第3部に取り組む。 1. 2021年度夏頃までに現在改訂中の英語論文を国際的な学術雑誌に投稿予定。 2. 2021年8月にオンラインで開催予定の‘British Shakespeare Association’ Virtual Conference (Shakespeare In/Action)のセミナーに参加が決定している。 3.「日本英文学会」等の研究発表に応募予定。 4.「日本シェイクスピア協会」のShakespeare Studiesや、‘Society for the Study of Early Modern Women and Gender’のEarly Modern Women: An Interdisciplinary Journal等の学会誌にも投稿する英語論文を執筆予定。
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Causes of Carryover |
本研究第2部として、第1期(2021年2月~3月)に大英図書館、米フォルジャー・シェイクスピア図書館(Folger Shakespeare Library)等での第一次資料収集・調査を予定していたが、コロナ禍のため2021年度以降に延期となった。同様の理由で参加を予定していた国内・国外の諸学会が中止や延期となった。よって国内・国外旅費は次年度使用に繰り越しとなった。2021年度にも本研究第2部第2期(2021年8月~9月)として英国や米国の図書館やアーカイブでの調査、研究を予定しているが、感染状況推移を見極めながら実施可否を判断したい。更なる研究環境の充実を図るため引き続き積極的に最新の研究書等の購入を行う予定である。そのための費用は次年度に請求予定である。
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Research Products
(1 results)