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2020 Fiscal Year Research-status Report

明治期沖縄の散文研究――「書く」ことをめぐる国民の生成

Research Project

Project/Area Number 20K21970
Research InstitutionAichi Shukutoku University

Principal Investigator

柳井 貴士  愛知淑徳大学, 創造表現学部, 講師 (50871050)

Project Period (FY) 2020-09-11 – 2022-03-31
Keywords『琉球新報』 / 地方だより / 月曜よみもの / 『琉球教育』 / 大城立裕
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的である「書かれた「作品」から現代を問う」という点をふまえ、明治期沖縄の資料収集を行った。資料収集先として設定した沖縄県立図書館がコロナ禍のため閉館するなどの事態もあったが、年度後半からは開館にいたったため、同図書館の所蔵資料『琉球新報』を中心に、明治30年代前半の記事を閲覧、抜粋、収集した。その中で、地方だよりにおける報告内容が、「決めつけ」のような中心/周縁の視点から、同地の具体性を帯びた報告へ変化している点を発見した。この点は、沖縄の内部への視点、外部からの視点を考察する際に重要になると考える。
また同図書館所蔵の大城立裕文庫における資料収集も、戦後沖縄文学を牽引してきた巨人の持つ、沖縄史への視座を学ぶ上で重要なものとなった。大城文庫には氏の記した多様なメモ書き、作品の構想などがある。近世、近代をふくめた沖縄史の重要人物をどのように調べ考察してきたかの痕跡をうかがう上でいくつか重要なメモ書きを発見した。一方、戦争末期を上海の東亜同文書院大学で過ごした大城氏が、沖縄に戻ってくる頃のメモ(すでにエッセイや小説『朝、上海に立ちつくす』などで書かれてはいるものの)や発表済みの初期作品から、エトランゼとしての大城氏を考察の対象にした論文(「大城立裕の文学と思想への一視点――沖縄を問うための問題意識」)をもって、石川県白山市が主催する「第36回暁烏敏賞」の佳作を受賞できた。本研究「明治期沖縄の散文研究」遂行における副産物としての受賞として報告したい。
コロナ禍における移動の制限、自粛もあり十全な資料収集には至らなかったが、ここでの資料を土台に、明治30年代から40年代にかけての書き手の生成の痕跡を追いたい。また『琉球新報』にとどまらず『琉球教育』などにおける「希求される県民像」を基に、日常の新聞記事に「何」が書かれていくかを考察したい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

沖縄県立図書館を中心とした資料収集は、コロナ禍における閉館などに伴い、当初予定していた明治33年~38年の6年間分の該当記事探索、『琉球教育』発刊当時から明治30年代の県民の教育立像のピックアップにやや遅れが出ている。とはいえ、『琉球新報』では4年分の資料の収集、分析からいくつかの点も発見された。今後、そこから見出した点を裏付けるための資料分析が必要になる。資料では、地方だよりの内容の変化――決めつけ的な地方への視座から、より具体的な生活報告への変化――が見出せる。また、本土新聞(今後、より詳細な実証が必要になる)にも掲載された講談の類が、『琉球新報』一面に掲載され、日本的な「情緒」が移入されていく様を見出せた。「武士道」、「殉死」といったものが移入されたとき、それまでの沖縄近世における「侍」道といかなる対照をなすのかも興味深いところであり、ここでの「発見」を通して、近世沖縄における「侍」道――大城立裕氏は本土的な武士道が生成されなかった点を指摘している――との差異を見出していくことも、新たな課題として重要になると考える。

Strategy for Future Research Activity

初年度に収集した資料の分析を進めるとともに、そこで収集できなかった年次への目配りも行っていく。すでに明治39年から40年代にかけての資料収集と考察、そこから導かれた問題点は本研究申請前に論文発表の形で行っているため、そこへとつながる明治39年以前の沖縄の言論状況、また散文という形での意志の表明、そこから生まれる創作性、創作物について考えていく。
一方で、新聞一面に連載される「講談」の分析もすすめながら、本土的な情緒と沖縄近世の「侍」や権力者たちのあり様を考察する必要を感じている。大城立裕氏が指摘するように、日本的な武士道が成立していないことも、貿易地としての沖縄、万国津梁として思想等から考える意味はあるだろう。その際に、沖縄の近世の資料の分析、武士道という観点からの比較対照のため、すでに『近世武士道論――山鹿素行と大道寺友山の「武士」育成』を世に問うている中嶋英介氏の知見をうかがうことも必要であると考える。
したがって、研究最終年度は、前期における資料収集と分析を中心に、後期においてはそこでの考察内容を学会、あるいは紀要論文などのかたちで発表することを目標とする。課題として提出した「どのように作品が(『琉球新報』などに)掲載されたか」、②「どのような作品が書かれたか」、③「本土との関係はどうか」という問題の中で、①については琉球新報社史を用いることで概ね、分析できる。そこで、②、③中心に本年度はすすめていきたい。②については、現在手元にある資料(明治33年~36年)を中心に行うことも可能であるが、さらなる収集も実施したい。また③については、近世「侍」の視点も借りながら、「講談」連載の痕跡から導かれる意味を考察したい。

Causes of Carryover

年度末に行い得た出張と資料購入にかかった経費の請求が、引き落としの関係などから2021年3月31日までに執行されず、次年度に繰り越したため。使用内容に関して、沖縄県立図書館を中心とした資料収集のための渡航、関係図書購入等を計画している。

URL: 

Published: 2021-12-27  

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