2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K21985
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
朴 秀浄 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (70878248)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 性科学 / 性欲学 / 日本近代文学 / 韓国近代文学 / 自然主義文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は資料調査に集中し、その成果を阪大比較文学会シンポジウム(2021年1月21日、於大阪大学豊中キャンパス)にて報告した。 まず、2020年11月19日から12月17日にかけて、韓国ソウルで現地調査を行った。海外からの入国者は2週間の自宅待機が義務付けられていたため、その間、調査予定の文献等をまとめていたが、想定外のことに、コロナ警戒レベルの格上げにより、図書館が閉館するなど、予定とおり調査を行うのは難しかった。しかし、韓国国立中央図書館で手に入れた『朝鮮総督部禁止単行本目録』(朝鮮総督部警務局、1941年1月)を通じ、日本で刊行された性科学の関連書物が、韓国に輸入されたことが明確に分かった。そこに見られる書物を抜粋し、目録を作成の上に、当時の新聞や雑誌において、このような書籍の販売・出版広告がなされた状況を調べ、朝鮮における性科学への関心を論じることができた。目録の一部は上記のシンポジウムにて報告した。 また、調査中に入手できた植民地時代の雑誌(『東光』や『別乾坤』等)における性科学関連の記事を分析した結果、朝鮮の雑誌では、逸脱的な性愛をめぐる欧州および日本の性科学者・性欲学者の言説を紹介・解説するにとどまったが、同時代の日本の雑誌(『変態性欲』等)では、このような言説を体現する「症例」の「告白」、つまり当事者による逸脱的な性愛の自己語りが見受けられるという相違が分かった。現在、この相違の理由を考察中であり、韓国と日本における自然主義文学の隆盛の一端を再検討するきっかけにしたいと思っている。これについては、2021年内に論文を投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナによって海外・国内の資料調査を円滑に行うことができなかったため、一次資料の入手や分析に時間がかかり、研究は当初の計画より少し遅れている状況にある。海外調査の場合、入出国の規制はもちろん、現地のコロナの拡散状況によって国立・公立図書館が閉まることも多くあった。国内の状況も同様であり、当初は2021年1月下旬に東京での資料調査を計画していたが、首都圏の緊急事態宣言によって延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
未だにコロナは猛威を振るっているが、多くの学会が大会をオンラインで開催する見込みであり、海外学会の参加も難しくないと考えられる。韓国日本文化学会もしくは韓国日本学会にて口頭発表を行い、これまで調査した成果をなるべく早く論文化したいと思う。
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Causes of Carryover |
物品費については、現地調査で購入する予定だった書籍や文献・資料を十分に手に入れられなかったため、差額が生じたが、次年度に合わせて使用するつもりである。旅費については、緊急事態宣言により国内出張を取り止めたため、次年度に出張を増やす予定である。人件費やその他についても、海外・国内の資料調査を円滑に行うことができなかったため、差額が生じた。
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Research Products
(1 results)