2021 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・グローバル化時代から読み返す日本語移民文学研究
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20K21986
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
仁平 千香子 山口大学, 国際総合科学部, 講師 (20737093)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 日系アメリカ人 / 外地二世 / 帰属感 / 自己肯定感 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に行ったリサーチをベースに、以下二本の論文等を発表した。 1「二世の贖罪意識についての考察―John Okadaと森崎和江の比較から」『AALA Journal』27号, 2021. 2「「懐かしさ」の時間学―戦後引揚者による語りから」『現代社会と時間』(山口大学時間学研究所)2022. 1では1920年代生まれの日系アメリカ人John Okadaと外地生まれの日本人森崎和江の作品を比較し、同時期に日本人として日本の外で生まれた子供たちがどのように戦中と戦後を生き、どのように日本人としての自分を意識していたのかを考察した。日系アメリカ人文学の研究はこれまでも数多くされてきたが、外地生まれの日本人の作品と比較した例はあまりない。この比較の重要性は、日本がアメリカの敵国であり朝鮮半島の「植民者」「占領者」という立場が、日本人としてのバックグラウンドを持つ子供たちにそれぞれ違った経験を持たせ、自己肯定感(否定間)に大きな影響を与えたことを論じた点である。これにより二世の帰属感の低さが自己認識に与える影響について深掘りすることができた。二世の研究というと、日系アメリカ人が経験した差別や日本の「国家としての罪」に焦点が偏りがちであったが、新しい視点を提供できたと思う。2では外地二世の語りを取り上げ、「祖国」としての日本が彼らの自己認識(自己肯定感)にどのような影響を与え、また戦後彼らが作家として活躍する際、外地二世としての経験やアイデンティティをどのように表現していったのかについて考察した。外地二世作家の多くは、戦時中の日本人の行いを恥じ、生まれ故郷(外地)への罪悪感を強く持ち、それを作品で表現している。既存の研究では彼らの語りを戦時中の日本の「恥」を立証する材料とする傾向が強かったが、拙稿では戦後のメディアの語りや戦後教育が二世としての自己認識に与えた影響に焦点を当てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りのペースで論文を発表できている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き資料の分析と論文執筆を続ける。
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Causes of Carryover |
産休、育休取得のため当年度の研究期間が限られていたため次年度使用額が生じた。 今年度は引き続き資料収集と論文掲載のために費用を使用する。
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[Book] 現代社会と時間2022
Author(s)
山口大学時間学研究所、時間学の構築編集委員会
Total Pages
196
Publisher
恒星社厚生閣
ISBN
9784769916758