2020 Fiscal Year Research-status Report
アンドレ・ブルトンにおける1940年代以降の自動記述の視覚的・造形的性質
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20K21988
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
中田 健太郎 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 講師 (90727736)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | シュルレアリスム / オートマティスム / アンドレ・ブルトン / 自動記述 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アンドレ・ブルトンの1940年代以降の自動記述(オートマティスムによる詩的実践)を主たる分析対象として、その視覚的・造形的性質について積極的に考察しようとするものである。そのような考察をとおして、ブルトンのオートマティスム論の再検証を行うことが研究の目的となる。 そのため、研究の初年度にあたる2020年度には、アンドレ・ブルトンの自動記述をめぐるテクストを再読する作業と並行して、シュルレアリスムおよびオートマティスムに関する近年の資料や、文学研究や美術批評に関する書籍の調査・収集をすすめた。とはいえ、資料収集および設備発注などの作業は、予定よりも遅れている状態である。 2020年10月には、日本ラカン協会より依頼を受け、「非理性、文学、精神分析ーー1930 年代フランスの思索と実践」と題するワークショップに、コメンテータとして参加した。このワークショップは、フランスの1930年代の思想状況を背景として、精神分析とシュルレアリスムの関係についてあらためて検討する契機となり、本研究にとって有益な示唆が多く得られた。この検討成果は、論文のかたちに発展させることを企図しており、日本ラカン協会の論集『I.R.S.』への寄稿を目指している。 また、本研究に着手する以前よりすすめられていた、アンドレ・ブルトンの自動記述作品の翻訳作業も進行中である。この翻訳作業も、1940年代以降のブルトンの自動記述をめぐる本研究にとって、有益な展開をもたらすことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を予想以上に受けたこともあり、資料収集および設備発注などの作業は、予定よりも遅れている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
日本ラカン協会主催のワークショップにおいて、フランスの思想状況を背景に、精神分析とシュルレアリスムの関係についてあらためて検討したことは、重要な機会となった。この検討成果を展開する論文を完成させ、1940年代以降のフランスの精神分析受容と、同時期のブルトンのオートマティスム論の関係について、考察を深めることが今後の主たる研究推進目標である。 また、自動記述の視覚的・造形的特質について十全に考察するためには、第二次世界大戦以後の文学的・美術的前衛の広がりについて調査し、オートマティスム論の多様な展開を再評価する必要がある。その資料調査をまとめた論文も、執筆を行う予定である。
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Causes of Carryover |
資料収集および設備発注の遅れが、次年度使用額の生じた理由である。次年度にはその遅れをとりもどし、予算を執行する予定である。
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