2021 Fiscal Year Research-status Report
ハーレム・ルネサンス期の黒人作家の作品における即興文化と即興性への理念的関心
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20K21989
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
萩埜 亮 白鴎大学, 教育学部, 講師 (60887925)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 批評的即興研究 / アメリカ黒人文学 / Cultural Pluralism / Pragmatism / Alain locke / Zora Neale Hurston / Improvisation |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は次の2点において研究を進展させることができた。 (1)文化多元主義(cultural pluralism)を中心とする20世紀前半の人種・民族アイデンティティおよび国民・国家アイデンティティをめぐる言説を、即興という観点から分析した。Wiliam James や John Dewey らプラグマティズムの思想家が提示した「未だ形成途上にあるもの」(still in the making)としてのアメリカという即興的な国家観が、彼らの哲学に色濃く影響を受けたAlain Locke や Zora Neale Hurston といった黒人作家らによる黒人の集団的アイデンティティの表象において受け継がれ、模倣や行為遂行性といった黒人文化を肯定する思想的背景となっていることを詳しく論じた。 (2)Zora Neale Hurston について、代表的エッセイ "Characteristics of Negro Expression" などに示された即興の美学への理解を分析するとともに、民族誌学者(Ethnographer)としての彼女の活動について、即興概念がその記述の「真正さ」を担保する役割を担っている点を分析した。James Clifford以後、文化人類学などの分野において文化の、そしてそれを記述する学者自身の立場の即興性が指摘されてきたことを踏まえ、Hurstonがそうしたポストモダン的な認識を既に保持していた点、Hurstonは単に同時代のフォークカルチャーへの熱狂を共有していたのではなく、そうした熱狂が示すノスタルジックな理想化を脱構築するような視点をもっていたことを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響で参加を予定していた国際学会が延期となる、年度後半に研究室を利用することができない、といった予期せぬ問題が発生した関係で、成果をまとめる作業に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究機関の延長を申請したことで、比較的余裕をもって研究成果の発表作業をすすめることができる見通しである。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会が延期になったため、旅費の支出がなくなった。年度後半に研究室を利用することができず、研究の延長を申請することとなったため、予定していた支出計画もそれに合わせて次年度へと延期した。
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