2021 Fiscal Year Annual Research Report
平家物語の伝本関係の再構築――語句分析を手段として
Project/Area Number |
20K21999
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
城阪 早紀 同志社大学, 研究開発推進機構, 助手 (60852605)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 軍記物語 / 『覚一本平家物語』 / 『延慶本平家物語』 / 語句 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年9月~2021年3月には、〈1.本文の選定〉と〈2.語句の選出・用例収集〉を行い、〈3.意味・用法の整理〉に着手した。2021年4月~2022年3月には、〈3.意味・用法の整理〉を進め、さらに〈4.対照表・論文の執筆〉を行った。研究成果は、次の2つの観点からまとめた。 (1)どの語句が何回使われているかを、対照して一覧する。 (2)特にいくつかの語句を取り上げて、両本の差異を意識しながら意味・用法を詳述する。 (1)に関わって、『覚一本平家物語』と『延慶本平家物語』の語句、約350語の用例数を対照した「平家物語伝本語句対照表」を、試稿としてまとめた。この表からは、たとえば、両本のうち多く使われる語句が何であるか、また、どちらかにのみ使われる語句にはどのようなものがあるかを知ることができる。また本表は、複合語・関連語や連語を集めるという方針を取っており、語句のひろがりをみることができるという特色がある。 (2)に関わって、負の評価を示す「うたてし」・「まさなし」・「きたなし」と、王法・仏法への破壊に対する驚きやあきれを示す「あさまし」を取りあげ、『覚一本平家物語』と『延慶本平家物語』の用例に即して意味・用法を整理し、結果をまとめた。なかでも「うたてし」と「あさまし」は、批評句として使われることのある形容詞であり、編者が物語中の出来事や人物をどのように捉えたかを知る手がかりになる語である。
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