2020 Fiscal Year Research-status Report
昭和期ユーモア小説に関する基礎的研究:ジャーナリズム出版戦略と読者受容の相互関係
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20K22001
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 貴之 追手門学院大学, 国際教養学部, 講師 (50881091)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | ユーモア小説 / 昭和 / ジャーナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では昭和期の「ユーモア小説」ジャンルについて、メディア的側面とジャーナリズム戦略から捉えなおすことを目的としている。 研究初年度である2020年度は、COVID-19ウイルスを起因とする社会情勢の影響により、当初の計画通りに研究を遂行することは難しかった。ただし以前から本研究者が収集していた、戦時下の婦人雑誌記事を精査して、基礎的なリスト化を行った。その成果については、公の学会発表等には至っていないものの、若手研究者間の研究会において発表を行った。そこで得ることができた有意義な意見や議論を通じて、当時の社会状況とジャーナリズム、「ユーモア小説」の循環的関係についての考察も進展した。 特に明治~昭和刊行の雑誌「婦女界」に関して、社主の都河龍が抱くジャーナリズム観および女性観のイデオロギー傾向と、当該誌が主宰した読者コミュニティとの連動についての分析が進んだ。また、編集者兼ユーモア作家の北町一郎の作品からは、ユーモア小説がメディアに連動しながらジャンルの立ち位置を自己規定していく過程が見いだされた。それらはミクロな視点では、戦時下における夫婦・家庭の和、次に読者共同体のサークルを称揚する内容であり、マクロに見れば国家内での資源循環と繋がるものである。 図書館等の閲覧制限が徐々に緩和されるであろう今後、これら基礎作業と考察はこれからの調査研究の下支えとして、本研究目的に適う具体的な成果につながっていくものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究はその目的上、第一段階として各地図書館・資料館に散在する資料体を確認・収集することを必要とするが、2020年度は先行きの見えぬ状況下で県を跨ぐ移動を自粛せざるをえず、各地の図書館等は休館あるいは限定的な公開状態であったため、新規の資料収集が進まなかった。そのため、当初の想定よりも遅延が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は社会情勢の変化も予想されるため、前年度に行うはずであった資料収集・分析を早急に進める予定である。また、理論的枠組みとしてジェンダー研究やメディア研究の文献を参照しながら、具体的な成果として学会発表や論文投稿につなげていきたい。また、2021年度の当初の研究計画も同時並行で進めるつもりである。
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Causes of Carryover |
本研究計画における直接経費の執行は、主に遠方への調査にかかる費用(複写費、物品費、旅費、人件費)および、収集した資料整理の費用(物品費・人件費)を想定しているが、2020年度は、社会情勢により遠方へ赴くことができず、資料整理の費用も発生しなかった。 2021年度は当該年度の計画に加え、前年度の計画を繰り越して改めて調査を行う予定であり、適正な使用を行いたい。
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