2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Creation of the Preservation Basis of Japanese Digital Records by System Development and Examination
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20K22018
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 陽 京都大学, 大学文書館, 特定助教 (10882615)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | アーカイブズ / 電子記録 / DX / AI / 長期保存 / 真正性 / 信頼性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で得られた成果を基準とし、日本における電子記録の現用管理と非現用となった電子記録の長期保存に関する先行研究の検討を行った。これにより、研究レベルにおいて、ISO 15489といった現用管理の国際標準やISO 14721という電子記録長期保存の国際標準について紹介されてはいるが、中央省庁や地方自治体の実務に活用されるような水準の成果は認められなかった。具体的にはそれぞれの標準に準拠したアプリケーションの事例研究が乏しく、そのため、そういったアプリケーションを運用した際に得られる利点が現場にうまく伝わっていない現状が明らかとなった。これについての詳細は、「電子記録研究の現在ー2004 年以降の回顧と展望一」(『アーカイブズ学研究』第36号、2022年6月、26-43頁)にまとめた。 また、近年盛んに提唱されるデジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation、DX)が電子記録に与える影響についても、本研究で得られた視点から分析を試みた。特に人工知能(Artificial Intelligence、AI)の活用あるいは悪用により、電子文書および画像の偽造が容易かつ精緻となりつつあるが、上記の標準に準拠したアプリケーションを利用し、連動させることで実現可能となる保管の連鎖が、そういった偽造文書や画像に対抗できる手段にもなりうると考えられる。こちらについては、「守るべき記録の特性と進めるべき業務の電子化」(『アーカイブズ学研究』第37号、2022年12月、22-32頁)で報告した。 残念ながら本研究では、保管の連鎖を実装したアプリケーションの開発には至らなかったが、いくつかのアプリケーションの検証によって、あるべきシステムの運用の方法について具体的に提示することには成功できた。今後は実際の組織における運用までを視野に入れて研究を進めたい。
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