2022 Fiscal Year Research-status Report
Foreigners and diplomats in 18th century France : case of the British
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20K22020
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
見瀬 悠 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (70881473)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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Keywords | 近世ヨーロッパ / 国際関係 / 外国人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、18世紀フランスにおける外国人と国家の関係を、ヨーロッパ国際社会の秩序形成との連関から明らかにすることである。具体的には、外国人の身体と財産の安全確保において在フランス外交官が果たした役割に着目し、国際法上の規範、同郷者コミュニティにおける外交官の位置、同郷者のかかわる係争への外交官の介入の3点から分析する。それによって、従来支配的だった一国史的枠組みを克服し、国際的に移動する人びとの主体的な観点から近世主権国家体制の形成と機能を明らかにすることを目指す。 この目的に照らし、2022年度の主な研究成果は次の二点である。 ①近世のヨーロッパとフランス王国における外交官の活動に関する基本的な研究文献を収集し読解した。それにより、近世における外交官駐在制度の発展、外交官の主な職務と活動についての理解を深めた。また、免責特権と治外法権の理論が形成されるなかで、フランス王国で本研究が対象とするイギリスを含むプロテスタント諸国の外交官が、外交官の邸宅内礼拝堂や付属の診療所において同郷者に対する霊的扶助や治療、埋葬を提供するという公と私の境界にある活動を通して、宮廷や貴族の社交では外交官が交わることのない中流・下層の同郷者に関する情報も獲得できていたことが明らかになった。 ②体調不良により2022年夏と2023年3月の渡仏がかなわなかったため、史料調査と研究の遅れを補う目的で、すでに入手済みの史料の一部を参考として読解した。それによって、18世紀のフランスにおいて外交官が同郷者の財産の安全を守るために保護を提供したことは、単に同郷者の利益保持をはかるだけでなく、治外法権を理論的基礎にしていた可能性があるという仮説を得た。2023年度はこの点をもう少し掘り下げて検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年の夏期長期休暇中にフランスの外務省文書館とパリ国立公文書館で史料調査を実施し、外交官を中心としてフランスで形成された同郷者のネットワークや、フランスでイギリス人たちが直面した諸問題、そこで外交官が果たした役割に関して史料分析を行う予定であった。 しかし、2022年5月に急病を患い、症状がやや落ち着いてからも心身が不安定な状態にあったことから、夏期休暇中に渡仏することがかなわなかった。 2023年3月に同様の史料調査を予定していたが、体調面の不安と急激な円安および航空券価格の上昇、本務校での職務の都合のために、断念せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年3月に渡仏し、2022年度に実施できなかった史料調査をできるだけ実施する予定である。ただし、この1回の史料調査では収集予定であった史料をすべて閲覧することは不可能であるため、研究の焦点をより限定し、イギリス外交官による同郷者の財産の保護の問題に分析をしぼる。すでに収集済みの史料から、その件に関連する事例に史料調査の対象を限定する。
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Causes of Carryover |
2022年度夏期長期休暇および2023年3月に予定していたフランスでの史料調査が申請者の体調不安ならびに新型コロナ感染の拡大の影響で実施できなかったため、未使用額が生じた。2024年3月に予定しているフランスでの史料調査の期間を一週間ほど延長することで、研究の遅れを補うとともに2022年度の未使用額を使用する予定である。
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