2021 Fiscal Year Research-status Report
The System of Allotment of Chigyo by the Edo Shogunate in Mid to Late Edo Period
Project/Area Number |
20K22021
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾崎 真理 大阪大学, 適塾記念センター, 特任助教 (60887967)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
|
Keywords | 私領渡 / 代官 / 勘定所 / 近世中後期 / 知行割 / 幕領 / 最寄替 / 場所替 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世中後期において全国の幕領で実施された私領渡差障有無調(私領渡に対する幕府の事前調査)を主な分析対象として、村が提出した私領渡差障有無調の報告書などに加え、私領主の領知替交渉記録、幕府側の知行割の審議書類、さらには代官役所側に残された勘定所との交渉記録などから、大名や旗本からの領知替要求や幕府と私領主らとの交渉の実態をふまえつつ、①幕府の知行割方針や意図およびその背景、②各幕領で差障調の実務を担った代官と勘定所との交渉の実態、③差障調に対する幕領の姿勢および私領渡に対する幕領村の動きを総合的に検討し、近世中後期における幕領配置の全体構造の解明を目指すものである。 本年度は新型コロナウイルス感染症の拡大をうけ、遠方の調査がいぜん困難な時期が続いたが、岐阜県歴史資料館、碧南市史資料調査室などで地方文書にのこる幕領村の領知替に対する対応がわかる史料(主に幕領の私領渡忌避運動に関する史料)の調査を行った。また今年度から藩政史料に残る村替交渉記録の翻刻、分析を進め、幕府史料などでは史料の残存状況により検討できなかった最幕末期以前の幕府の知行割の審議過程を明らかにするとともに、私領主と幕府役人との水面下での交渉過程や勘定所内の知行割の「内調」(内部の調査方法)の実態についても検討を進めることができた。 これらの分析により、近世中後期における幕府の知行割制度の全体像とともに、制度の運用実態も明らかになってきた。今後は知行割制度の実証的研究をふまえつつ、知行割制度の中で私領渡差障有無調を改めて位置づけ直すことで、領知替を対象として、近世中後期の領主ー領民関係を展望していきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響をうけて、遠方の調査は断念せざるを得ない状況が続いたため、必要な調査を計画通り行うことができなかった。そのため、既撮影分の史料および刊行史料による分析が主となった。また、今年度より検討を開始した藩政史料の分析により、幕府史料等では不可能と思われた知行割制度の全容の解明が可能となり、制度の運用実態も把握できることがわかったが、その検討にはさらなる時間を要することが判明した。積み残した調査は次年度に行うとともに、今年度末調査分も次年度に検討、分析する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度のまでの分析結果をもとに、近世中後期の幕府知行割制度とその運用実態を総合的にとらえつつ、知行制の解明から近世中後期の国会支配の構造を解き明かすことが今後の課題である。その方策として今年度より開始した藩政史料の調査、検討により、幕府史料の欠を補いつつ、分析を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、遠隔地の調査が困難になったことが原因である。ただし、次年度にまとめて調査を行う予定である。
|
Research Products
(1 results)