2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K22028
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
深串 徹 島根県立大学, 国際関係学部, 准教授 (90881657)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 視覚障害者 / 台湾 / 脱植民地化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本からの脱植民地化が、台湾の視覚障害者のおかれた状況にどのような変化をもたらしたかを検討した。具体的には、(一)植民地統治終了の前後で、視覚障害教育の内容、視覚障害者の就業パターン、公的支援の実質にはどのような変化が生じたのか、(二)学校教科書やメディア等において、視覚障害者はどのように社会的に表象され、その表象は植民地統治の終了前後でどのように変化したかの二点を中心に分析を行った。 研究の成果として明らかになったことは、以下のとおりである。第一に、視覚障害教育は中国語による教育や注音符号点字の導入など一定の脱日本化が行われた。だが、職業教育では日本統治時代に導入された按摩が引き続き行われ、視覚障害者の就業先としても重要な位置を占め続けるなど、連続性も見られた。第二に、視覚障害者は「台湾省盲人福利協会」を結成し、台湾省議会に対してロビイングを行うなど、その社会的影響力は日本統治時代よりも向上した。もっとも、協会の設立に重要な役割を果たしたのは戦前の盲学校関係者であった。第三に、戦後台湾の視覚障害教育は統合教育の導入など、米国からも大きな影響を受け、その先進的な取り組みは日本の教育関係者からも注目された。第四に、視覚障害者は中華民国時期に入っても、日本統治時代と同様に献金や軍人への慰問を行うなど、戦争と無関係ではいられなかった。また、国家元首の仁愛や恩徳を証明する存在として、あるいはハンディキャップを負いながらも国策に貢献しようとする愛国的な国民として、宣伝に用いられることもあった。 台湾の視覚障害者は、植民地統治の終了後、中国大陸と米国から大きな影響を受けることとなった。しかし、盲学校関係者のネットワークの存在や、中華民国時代に戦時体制が継続して布かれたなどにより、日本統治時代の影響が完全に払拭されることはなかったのである。
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