2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22029
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
中川 朋美 南山大学, 人類学研究所, 嘱託講師 (00882606)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 暴力 / 武器 / 受傷人骨 / 弥生時代 / 儀礼的行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、弥生時代における、儀礼的行為と集団規模の暴力の関係性を分析し、集団の結束が実際に起きた暴力にどの程度の影響を与えたのかについて明らかにすることを目的としている。そこで、2020度は、(1)「首狩り」行為・複数回受傷について既存のデータをアップデートし、武器副葬・埋納行為のデータを集成し、2021度は(2)暴力の性格を考慮した暴力の規模を再整理して、(3)この(1)・(2)の結果を照合・考察する予定であった。 2020度は、主に文献ベースでのデータ整理・集成と、実物資料の調査に向けた技術的な準備を行った。まず、(1)「首狩り」行為・複数回受傷のデータを文献ベースで加筆・修正し、武器副葬・埋納行為の文献を集め、データ化を行った。「首狩り」行為と複数回受傷のデータの整理・集成はほぼ完了し、武器副葬は近畿地方については文献の整理が終了しデータ化の目途がついている状況である。次に、後述する理由から、先に(2)暴力の性格を踏まえた暴力の規模に関する検討を進めている。(2)暴力の性格と規模に関する検討はおおよそ目途がついており、成果の一部は近日中に論文として発表される予定である(e.g., 中川(印刷中))。これに加えて、2021年度に向けた実物資料の調査準備として、三次元化の手法の検討し(e.g., 中尾ほか2021)、機材の準備がおおよそ完了した。 そのため、2021年度に必要な作業としては、(1)武器副葬・埋納行為の集成データの作成をさらに進め、実見的な調査による実物資料のデータ化を進めること、(3)これら(1)・(2)の結果の照合・考察し、論文化・発表を行うことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、文献ベースでのデータの集成作業はおおよそ目途がついている。新型コロナウイルス感染症に伴う社会状況により、十分な実物資料の調査は行えていないが、2021度の作業のうち現在実行可能な作業を先に進めた。具体的には、(2)暴力の性格と規模に関する検討と、実物資料の三次元化に向けた技術的な準備である。若干の遅れがあるが、2021年度に向けた作業が円滑に行えるだけの準備はすでに整っているため、おおむね順調な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに述べた通り、2021年度の作業は、(1)武器副葬・埋納行為の集成データの加筆と実物資料のデータ化、(3)各結果の照合・考察、論文化・発表を行うことである。 まずは、(1)集成データの加筆を優先的に行う。次に、世情が安定している場合は実物資料の調査の準備を進め、今後世情が安定しない場合は、(3)集成データから分析を行い、論文化に向けて本集成データにおける全体的な傾向を先に検討する予定である。(1)は遅くとも8月までに完了し、以降の期間で(3)分析・検討・論文化を進めたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由として、主に2点が挙げられる。一つ目は、本年度予定していた国内外の学会が中止・延期あるいはオンライン開催となったことである。これによって、当初必要としていた旅費やポスターの印刷費が今年度は不要となった。二つ目は、2020年度は他大学への文献調査や実物資料の調査が十分に行えなかったことである。可能な限り大学を通した文献の取り寄せや古書を購入するなどして対処したため、計画に大きな支障は出ていないが、その分の旅費や文献の複写費用に余剰ができている。 2021年度の計画では、これらの余剰分も合わせて、2020年度に行えていない分の文献を収集・取り寄せや、実物資料の調査にかかる旅費等、分析と発表・論文化に向けた準備費用に充てる予定である。
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