2022 Fiscal Year Annual Research Report
視覚障害者の日常的な外出移動の社会的生産過程に関する研究
Project/Area Number |
20K22038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 雅大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00881880)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | モビリティ / 視覚障害者 / 移動支援 / ガイドヘルプ / 障害の地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍の影響もあり、対面接触を伴う現地調査が難しくなったため、当初の計画を変更し、ガイドヘルプに関する資料分析と、障害者の移動を捉えるための理論的枠組みの検討に注力することとした。 本年度は主に後者の作業を行い、前年度までに入手したものを含め、障害の地理学と人文・社会科学におけるモビリティ研究の文献を整理・検討した。障害の地理学については、学史的・思想史的観点から検討し、当該分野の中心には常に移動をめぐる問題があることを見出した。また、1990年代に生じた障害の地理学論争に関わった研究者が皆、障害者の移動に関する研究に取り組んでいたことを見出し、その論争が実は「障害者の移動」を考える上でも重要な出来事であったという結論に至った。モビリティ研究については、①当該取組みにおいて障害者の移動が「モビリティのポリティクス」に関わるものとして位置づけられていること、②近年、ポスト人間中心主義等の観点からモビリティのポリティクスを根本的に見直す動きがあり、その中で健常中心主義や障害差別主義の問題への言及が見られることが明らかとなった。②については重要な英語論文を日本語訳し、発表することができた。 研究時期全体を振り返ると、日本の地理学分野ではほとんど知られていない英語圏の障害研究とモビリティ研究について、主に理論的側面からその成果を検討・紹介できたことが大きな成果であった。それにより、視覚障害者の移動を社会的に生産されたものとしてとらえるための理論的枠組みの構築に寄与できたと考えられる。しかし、当初予定していた経験的研究に取り組むことがほとんどできなかったため、今後の課題としたい。また、移動の表象の側面については資料の収集・分析を行い、一定の知見を得たが、研究期間中に成果を発表することができなかった。早急に成果をまとめ、経験的研究の面でもこの分野に寄与したいと考えている。
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