2020 Fiscal Year Research-status Report
多文化・多言語教育の人類学的理論構築と実践に向けて:ボリビアの言語政策を中心に
Project/Area Number |
20K22042
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
中野 隆基 明星大学, 教育学部, 講師 (00883729)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 多文化・多言語主義 / 言語社会化 / 学校教育 / 先住民言語 / ラテンアメリカ(南米低地先住民社会) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ボリビア東部低地の異文化間・文化内複言語教育を、主に先住民言語教育実施過程のコミュニケーションに着目しつつ、民族誌的に自他関係や社会変化の議論を問い直すことである。そのために、本年度において行った研究の内容と成果は次の通りである。 1. 既に手元にある民族誌データとボリビアの公教育の資料分析を複眼的に解析するための書籍資料(地域研究、異文化間複言語教育、多文化・多言語教育についての教育言語人類学的研究から、その分野を包含する教育人類学や言語人類学、さらにはその上位ディシプリンである文化人類学に至るまでの幅広い分野の書籍)の収集を開始した。 2. 上述の書籍資料を用いて、学会発表や研究者との交流を通したデータの整理・検討を行った。2020年9月には、第二回社会言語科学会シンポジウム「多声を聴く、他者と生きる―言語から人と経験世界の多様性を問い直す―」(オンライン)にて、ボリビアの異文化間・文化内複言語教育の現状について個人発表を行った。2021年2月には、メキシコ国立自治大学の「第2回メキシコ・日本国際学術コロキアム」(オンライン開催)の「移動、関連性、共有」と題されたパネルにて、調査のフィールド(ボリビアの異文化間・文化内・複言語教育) とホーム(日本の大学におけるスペイン語教育)を往還してきた自身の言語社会化の過程について、オート・エスノグラフィーの観点から発表を行った。これらの発表と質疑応答の中では、「多」のなかで一つ一つ括られていく「声」をどう捉えるかという問題や、より詳細にデータを分析する必要がある等、今後の課題を認識することができた。加えて、コロナ禍において、人の移動、科学技術、異文化理解、コミュニケーションのありようとその関連性を探るという、本研究の教育的実践にとって有意義な視点も得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の進捗状況に関しては「やや遅れている」と言える。理由としては次の3点が挙げられる。 1. 第二回社会言語科学会シンポジウムと第2回メキシコ・日本国際学術コロキアムでの口頭発表を遂行し、今後取り組むべき課題がより明確となった。 2. 当初予定していた文献・資料を通した研究を行った結果、声をめぐるより微細な権力関係をどのように捉えるか、という新たな課題を発見することができた。 3. 研究環境の整備という点、研究関連の書籍・関連資料の網羅的な収集・整理という点において、十分な遂行をすることができなかった。 以上より、進捗状況としては「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の進捗状況と、最終年度はコロナ禍で現地調査のための渡航が困難であることを踏まえ、最終年度は多面的・複眼的に研究を遂行できるよう、十分な書籍・関連資料の収集にあてることも含め、柔軟な対応を心がけたい。 本年度までの成果をもとに研究成果を執筆・投稿しながら、博士論文の執筆に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、新型コロナウイルスの影響により円滑な予算執行を行うことが困難であったことが挙げられる。しかしながら、今年度も引き続き新型コロナウイルスの影響は続くことが予想されるため、現地調査の遂行の困難さ等も踏まえつつ、現状でとれる範囲内で執行していきたい。具体的には、昨年度十分に執行できなかった、研究環境の整備や、研究関連の書籍・資料を網羅的に収集・整理し、研究の遂行と成果発表に役立てることなどが考えられる。
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