2023 Fiscal Year Annual Research Report
公務災害補償制度と民間労災補償制度との制度間比較研究
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20K22052
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
弘中 章 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (00878382)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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Keywords | 公務員労働法 / 非正規公務員の災害補償 / 労働者労災保険及び保護法 / 公務人員退休資遣撫【血へんにおおざと】法 / 請求主義 / 職権探知主義 / 災害補償条例 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は(1)前年度に博士論文としてまとめた内容を仮説として、災害補償の分野に関わる弁護士にこれを提示し、仮設がどこまで受け入れられるか検証作業を行った。また(2)講演を通じて研究成果を社会に還元する活動に従事した。あわせて(3)当初から予定していた英国での文献調査を実現するとともに、台湾の研究者・法曹実務家(裁判官・弁護士)を訪問する機会があったため、台湾における(官民の)災害補償制度の現況について現地で情報収集を行った。具体的な内容は以下のとおりである。 (1)東京・福岡・大阪の弁護士にインタビューを行った。そこでは、地方公務員を念頭に、公務災害補償における手続が民間労災に比して長期化しており、その要因として公務災害における認定基準(行政通達)の不明確さ(それゆえ実務担当者による判断の困難さ)が考えられる、との意見が聞かれた。もっとも、その不明確さが自由な代理人活動の余地を生み出すとして肯定的に捉える見解もあり、評価は一枚岩ではない。官民の違いは(手続も含めて)一長一短との声を重視すると、官民の違いの評価、制度全体のあり方については更に慎重な検討が必要であると考えられた。 (2)①東京三弁護士会の弁護士を対象にした研修会に招かれ、公務災害補償制度の概要と問題点について講演した。100名を超える参加者との間で情報を共有できたことは有意義であった。②台湾士林地方法院で行われた同労働部裁判官(蔡志宏裁判官ほか)及び労働調解学会との協議会において講演をし、日本の状況を踏まえた台湾への問題提起を行った。 (3)2024年3月にロンドン大学図書館を訪問し、英国の災害補償関連の文献を収集した。同月には台北大学(郭玲惠教授・傳伯翔助理教授)と萬国法律事務所(高志明弁護士・呉采模弁護士ほか)も訪問し、「労働者労災保険及び保護法」の改正や「公務人員退休資遣撫●法」等について説明を受けた。
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Research Products
(3 results)