2023 Fiscal Year Research-status Report
Determination of the Parent-Child Relationship in the United States
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20K22053
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
山口 真由 信州大学, 先鋭領域融合研究群社会基盤研究所, 特任教授 (50879806)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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Keywords | 家族法 / 親子法 / 生殖補助医療 / アメリカ法 / 英米法 |
Outline of Annual Research Achievements |
「親とはなにか」その問いに対する法的に普遍的な答えを探求するのが本研究の目的である。そのために、本研究はアメリカとの比較法の手法を取る。アメリカでは、家族をめぐる社会の急激な変化に対応するため、家族法がドラスティックに変遷してきた。具体的には、子どもを産んだ者を母とし、その母と婚姻によって結ばれた者を父と定めるという伝統的なルールに、未婚の母の著しい増加に伴って子どもとの血縁を推定する方法が加えられた。さらに、精子や卵子の提供や代理懐胎などの生殖補助医療の進展によって親となる意思を基準とする方法が追加され、LGBTQ+による子育てを承認する風潮の中で実際に親として機能している者を親と定める理論が法制化された。 本研究では、母と父をより性中立的に「第一の親」「第二の親」と言い換えたうえでそれぞれに分けて要件を検討することとした。母との婚姻に加えて、子との血縁、さらに親になる意思や親としての機能と「第二の親」を定める基準は多様化の一途をたどっているように見受けられる。それでもこれらに通底する普遍的な要素の抽出を試みるために、それぞれのルールを分解し、その共通点として①親としての関係に入ることに関する母との合意、②子との継続的な親子としての関係、そして③外部から見て家族と認識されるユニットの形成という3つの要素を抽出し、これが「第二の親の要件」となるのではないかと考えた。 この研究をまとめた『アメリカにおける第二の親の決定』(弘文堂、2022年)は尾中郁夫・家族法新人奨励賞を受賞している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においては「第二の親」の要件を検討した後に、「第一の親」の要件を調査することを予定していた。「第一の親」の要件については、子どもを産んだ女性を母と定めるというルールは厳格なものとしてアメリカにおいても維持されている。一方で、養子縁組に加えて1980年代には賛否が分かれていた代理懐胎も現代のアメリカ社会では1つのプロセスとして定着している。産みの母が法的な母とならない例外的な場合から、そこにも共通する「第一の親」の要件を抽出する試みは徐々に進んでいるものの、2023年度に子どもを出産し、産前産後に休業したこともあり、研究はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「第一の親」の要件の検討を進めたい。代理懐胎については概ね調査が進み、そこから①代理懐胎者の権利の保護、②子どもの利益の保護、そして③両者を可能にするための司法の関与という3つを代理懐胎が認められるための要件として抽出した。今後は、この観点から養子縁組の制度を分析したい。そのうえで、産みの母を法的な母にしない例外的な場合がいかなる場合に法的に許容されるかという要件を抜き出し、そこから逆説的に「第一の親」の要件を考えることを計画している。
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Causes of Carryover |
本研究においては、実際にアメリカに渡航して現地から情報を収集することを計画していた。ところが、新型コロナによって渡航が制限される期間が継続している間にデータベース化が進み、本研究に必要な資料で現地に赴かなければ入手できないものがほとんどなくなっているのが現状である。 また、2023年度に子どもを出産し、産前産後の休業のために研究の進展が遅れいている状況もある。 次年度以降において、オンラインでの資料入手や使用に必要なパソコンやプリンタ等の機器、データベース等の購入に使用して、本研究を進展させたい。
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