2021 Fiscal Year Annual Research Report
リバタリアニズムにおける分配施策の理論的基礎―ベーシック・インカムを中心に
Project/Area Number |
20K22060
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福原 明雄 九州大学, 法学研究院, 准教授 (90878258)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | リバタリアニズム / 分配施策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究には大きく分けて二つの課題があり、それは①リバタリアニズムを主とする分配的正義論についての検討と②ベーシック・インカム(BI)をはじめとする分配施策の理論的・思想的検討の二つである。 令和3年度の本研究では、昨年度の報告で記したように、②については引き続きの渉猟、①については人生の意味論のような、より基礎的な議論を軸とする自己所有権の基礎と分配的議論への示唆について検討した。②についての渉猟は、昨年度と同じく劇的な発見はできなかったが、様々なBI正当化のための議論が、その哲学的なレベルでの原理的基礎を必ずしも明らかにせずに組み立てられていること、また、基礎を与えようとする議論は共通に自らの理論的な基礎とその(未だ論証はされていない)目指す制度構想のためにBIをデザインし、それに沿う様々な美点を挙げていくことを改めて確かめた。このことから、改めて申請者の議論がBIにこだわるべきか否かを明らかにするには、改めて詳細に①を見直す必要があるという示唆を得た。 ①については、Nozick的な自己所有権とロック的但し書きの組み合わせという構成を取る議論のうち、Fabian Wendtの十分主義的議論を主たる検討対象にして、自己所有権の基礎付けと分配原理の導出の関係を検討した。その中でWendtは、人間を「プロジェクト追求者」として理解することから自己所有権と分配的な示唆を引き出すが、プロジェクトの多様性・個別性の容認と、実現されるべき十分性の間での齟齬が解消できていないと考えた。それ故、人間はプロジェクト追求的存在であるという人間理解では、適切に十分性への権利とその閾値を導き出すことはできない考えた。しかし、人間理解などのより基礎的な原理から議論を組み立てるという方向性は、申請者のこれまでの議論と通ずるものがあり、この方向性が突飛でない、十分にあり得るものだと確認できた。
|
Research Products
(4 results)