2021 Fiscal Year Research-status Report
財務危機状態にある企業の取締役等に対する責任減免制度の在り方
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20K22062
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Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
木村 健登 中央学院大学, 法学部, 講師 (90879701)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 取締役の責任 / 補償契約 / 役員等賠償責任保険 / 取締役 / 責任減免 / 財務危機 / カナダ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究課題である「財務危機状態における取締役の責任減免制度」に関する検討のうち、カナダの法制度及び関連する実務慣行等についての調査を中心的に行った。その成果はおおむね以下の通りである。 第一に、カナダにおいて取締役が負担することとなる主要な責任リスクとしては、会社法上の責任リスク(注意義務/信認義務違反に基づく責任リスク等)のほか、雇用法上の責任リスク(従業員の未払賃金に対する責任リスク)が存在する。このことを踏まえ、カナダにおいて上記の各リスクが取締役に実際上どの程度の脅威を及ぼしているかを明らかにすべく、同国の法制度および判例の分析・検討を実施した。その結果、前者のリスクについては、取締役にとってさほど深刻なものとは解されていないのに対し、後者のリスクについては、とりわけ企業の債務超過ないし倒産局面において、取締役にとって十分な脅威を提示するものであることが明らかとなった。 第二に、カナダにおいては、企業の倒産局面における取締役の一斉辞任という弊害を回避することを目的として、上述の責任リスク(とりわけ、後者の雇用法上の責任リスク)を軽減するための法制度が複数用意されている。このことを踏まえ、カナダ法下におけるそれらの制度の概要等についても、併せて検討を実施した。その結果、カナダの会社法上の責任軽減制度については、米国(およびわが国)におけるそれとおおむね共通しているのに対し、同国においては倒産法上の責任軽減制度として、それら他国には類を見ない独自の制度が用意されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大の影響が長期化し、移動を伴う研究活動がほぼ全面的に制限されたため、当初の計画通りには研究が進展していないのが現状である。 とりわけ、研究成果を報告する機会(対面での研究会等)に著しい制約が生じたことから、報告に対するフィードバックを得る機会も限定的なものに留まった。このことが影響する形で、最終的な研究成果の取りまとめおよび公表に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の最終年度である次年度においては、過去二年間の研究成果を整理し、それらを論文として取りまとめ、これを公表するための作業に着手する。 具体的には、本研究の前半部分に相当する一部については、既に今年度に成果として公表済であることから、次年度はその続きに相当する部分から論文執筆等を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、昨年度に引き続き移動を伴う研究活動がほぼ全面的に制限されたため、旅費を支出する機会が一切なく、その結果本年度の使用額も当初予定には達しなかった。このことを踏まえ、それら未使用分については次年度に繰り越し、金銭面での憂いなく集中的に研究に打ち込める環境を用意するのが最善であると判断した。 もっとも、旅費については次年度も引き続き執行が困難であることが予想されるため、他の費目(物品費等)に振り替えて使用することも検討している。
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