2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22063
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
熊代 拓馬 青山学院大学, 法学部, 助教 (50877040)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 会社法 / 法の経済分析 / コーポレート・ガバナンス / 非財務情報開示 / 役員報酬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、株主による監視・対話を実効的なものとするために、それを支える法制度はいかにあるべきかという問題を解明し、望ましい非財務情報開示制度および是正手段のあり方について解釈論・立法論を提示することである。2021年度の研究成果は下記2点である。 第一に、非財務情報、およびコーポレート・ガバナンスに対する株主の是正手段のうち、役員報酬を対象に、網羅的な検討を行った成果を書籍として公刊した。会社法下において、株主は役員報酬に対する決定権限を与えられ、また、複数の法源の下で役員報酬についての情報開示が義務付けられているが、必ずしも現行制度の規律付けは実効的なものではないという問題意識の下、米国・英国・豪州の法制度、議論状況、実証分析等を参照しながら、役員報酬に対する法規制の目的を明確なものとし、当該目的達成に適合する法制度を解釈論・立法論として提示した。 第二に、非財務情報開示の開示内容の正確性の確保に関して、米国における証券詐欺訴訟を題材に、法的責任の追及による規律付けの機能と限界につき、2020年度から検討していた成果を、本年度に論文として公表した。株主は企業から開示される非財務情報を基に投資判断、経営者への(との)監視・対話を行うが、開示情報が不正確であれば実効的な監視・対話が実現できない。そこで、いかにして正確性を確保するかという問題意識の下で、近時、コーポレート・ガバナンスに関する不実記載が争われた事案を手がかりに、書類作成者等の法的責任による規律付けを分析したが、コーポレート・ガバナンスに関する一般的な記載は重要性を欠くと判断される場合が多く、規律付けの手法としては限界があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載の通り、2021年度は、非財務情報、およびコーポレート・ガバナンスに対する株主の是正手段のうち、役員報酬を対象に、網羅的な検討を行った成果を公表することができた。本研究は、非財務情報開示制度および是正手段のあり方について解釈論・立法論を提示することを目的とするところ、上記の成果は本目的の大部分を達成するものである。したがって、おおむね順調に進展しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2020年度・20221年度に得ることのできた研究成果に基づき、非財務情報の開示内容の正確性確保についての検討を深化させる予定である。具体的には、非財務情報の開示内容の正確性確保に関するわが国の現行制度を整理・分析し、問題点を抽出する。その上で、米国・英国の法制度や議論状況等を参照しながら、問題点に対する処方箋の提示を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、対面形式での研究会・学会の開催が中止となり、また、出張が制限されたことで、当初予定していた研究会への出席・海外での資料収集が実現できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、和書・洋書をはじめとした物品費に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)