2020 Fiscal Year Research-status Report
特殊詐欺事犯に関する共犯問題と因果的共犯論の再構成
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20K22067
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷岡 拓樹 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (60878825)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 刑法 / 共犯 / 共同正犯 / 承継的共同正犯 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在社会問題となっている特殊詐欺は、組織的に分業して行われるという特殊性があり、それにより、共犯論上のさまざまな問題を生じさせている。本研究では、従来の因果的共犯論を基礎とした共犯論では、それらに十分に対応することができないという問題意識から、因果的共犯論を再構成することを試みる。そして、そのような立場から、①承継的共同正犯の問題、②包括的共謀の問題、③「抜き」の問題(共謀の射程、共犯関係の解消の問題)について、具体的な解決指針を示す。 令和2年度は、上記の研究計画のうち、①承継的共同正犯の問題、②包括的共謀の問題について検討を加えた。具体的には、共同正犯の成立要件を再構築し、それぞれの問題について、その成否を検討した。そこでは、共同正犯の成立を基礎づける「共同」には、2つの類型が含まれていたことを明らかにした。そのような分類は、実行共同正犯と共謀共同正犯という従来の分類に概ね対応するものであるが、本研究では、それらが区別されるべき根拠を明らかにするとともに、それらの具体的な成立基準を示すことができた。また、そのような理解に従えば、詐欺罪の承継的共同正犯の成立を認めることができることを示した(①の問題の解決)。さらに、組織によって行われた詐欺であれば、当該詐欺に具体的に関与していなかった組織の構成員であっても、詐欺罪の共同正犯の成立を認めることができることを示した(②の問題の解決)。 以上の研究成果については、既に論文を執筆済みであり、令和3年度に公開される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度では、本研究計画で検討すべき3つの問題のうち、2つについて検討を加えることができた。また、そこで得られた理解は、③「抜き」の問題についての検討でも、その基礎をなすものである。そのため、令和3年度の研究に向けた準備も整えられているといえる。 したがって、研究計画は、おおむね順調に進展しているといえる。 もっとも、特殊詐欺事件に関しては、今後の実務の動向も注視する必要があるため、令和2年度に検討を加えた2つの問題についても、これで検討が終わったわけではない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、実務の動向も踏まえつつ、残された③「抜き」の問題について検討を加える予定である。そこでは、これまでの研究成果をより具体化し、展開していく予定である。具体的には、まず、共謀の射程、共犯関係の解消について、具体的な基準を示し、それが従来の(特殊詐欺以外の)裁判例とも整合することを示す。そして、そのような理解から、特殊詐欺における「抜き」の問題が、どのように解決されるのかを示す。 このような研究計画を遂行するため、判例の調査と理論的な検討を行う予定である。
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