2020 Fiscal Year Research-status Report
リーガル・リアリズムの再定位:法学と経済学の横断運動として
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20K22070
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
菊地 諒 立命館大学, 法学部, 准教授 (50828754)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 法思想史 / 経済思想史 / リーガル・リアリズム / 制度学派 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、本研究の対象であるところの、アメリカの法思想におけるリーガル・リアリズムおよびその周辺と、経済思想における制度学派およびその周辺に関する学術文献を収集・読解する作業を行った。この作業を通じて、下記の2点を明らかにした。 第1に、リーガル・リアリズムとして捉えられている思想的潮流に、法と社会科学の連携という契機が含まれている点である。一般にリーガル・リアリズムの特徴とは、具体的な判決が現実に法を作り出しているという観点から、裁判過程における法創造的性質に注目するという側面であると考えられている。本研究ではこの主たる特徴に加えて、当時の文献の検討を通じて重要な特徴を確認した。すなわち、リーガル・リアリズムの論者たちは、人間の行動に関する実証的研究の必要性から、経済学・心理学をはじめとする隣接諸学問の知見を法学へと導入することを試みていたという側面である。 第2に、制度学派の経済思想を構成する要素として、裁判を通じて形成される法が一定のウェイトを占めている点である。一般に、制度学派の代表的論者に共通する特徴は、制度を重視するという態度であると考えられている。本研究では当時の文献の検討を通じて、制度学派の中に、特に裁判を中心とする司法制度を重視し、現実に作り出される法をその理論の中に取り入れる立場が存在したことを確認した。 以上の2点は、法思想におけるリーガル・リアリズムと、経済思想における制度学派の影響関係を示唆している。本研究の目的は、リーガル・リアリズムに対する制度学派の影響を解明することで、学際的・分野横断的な運動としてリーガル・リアリズムを再定位することである。この目的の達成にあたって、これらの研究成果は十分な意義を持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リーガル・リアリズムおよび制度学派に関する学術文献の収集・読解を通じて、その成立過程と特徴についての理解を獲得することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に引き続き、リーガル・リアリズムおよび制度学派に関する学術文献の収集・読解を行うと共に、これまでの分析を踏まえて、リーガル・リアリズムと制度学派の影響関係を定量的に解明し、その成果を論文の形で公表する。
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Causes of Carryover |
学術文献の収集数が当初の予定を下回ってしまったため、未使用の金額が生じた。2021年度は、この金額をさらなる学術文献の収集のために使用する予定である。
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