2020 Fiscal Year Research-status Report
財政規律の確保に向けた取り組みに関する理論・実証的検討
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20K22085
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
後藤 剛志 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 講師 (30880223)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 財政規律 / 会計操作 / 財政規制 / 独立財政機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は3点の研究の進捗があった。まず1点目に本年度は財政規制についての研究成果の学術雑誌掲載を目指し、論文の改定を行ったが、財政規制の存在が政府による会計操作を誘発するという従来示していた分析結果に加えて、財政規制が会計操作の可能性がある状況であっても債券発行抑制効果があるために、規制対象となりうる政府によって内生的に設定される状況があるという理論的な結果と、理論分析の設定に整合的な実証分析の方法を試行し、理論分析と整合的な実証結果を得ることができた。 2点目に異時点間の最適な財配分を歪ませかねない財政規制がなぜ設定されるのかという問いについて、時間不整合性をもたらす利得関数を持つような政府を考え、時間不整合性の度合いについて不確実性がある場合に、事後の政府の最適化を考慮しながら、政府の予算配分を事前の意味で最適化するような「コミットメントと柔軟性」の問題に着目して文献調査を行い、最適な財政規制の制度設計に関する知見を深めた。 3点目に政治的に独立財政機関の設置の合意がどのように取れるのかという問いについて、政治経済学的なモデルの構築を目指し、検討を行った。独立財政機関はチープトークによって最適な政策の選択の可能性を高める一方で、支持基盤からの支持を失いかねないイデオロギーに反する政策を推薦する可能性もあり得る。こうした状況では、与野党の支持基盤の支持といったコストと最適だと思われる政策を取ることによる社会厚生増大といったベネフィットとのバランスで独立財政機関の設置が決まることになると思われる。このようなモデルの構築を現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従来より行っている本研究課題と関連する研究の学術雑誌掲載が決まらず、それに伴い、当該研究の改定作業等に時間を取られてしまい、計画に遅れが出ている。 また、計画していた自治体の経常収支比率に関する実証分析については、経常収支比率に換算される非正規公務員の内訳が自治体ごとでかなり異なるということが調査の結果判明し、分析が困難になった。 さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大により、大学での研究が制限されるなどの問題もあったため、計画に遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は財政規制と独立財政機関についての理論研究に焦点をあててモデルの構築を目指し、文献調査などを実施する。また研究遂行上、必要と思われる知識の不足がいくつか見られたため、本研究課題の実施期間終了以降の研究のためにも、必要であればある程度時間をかけて知識の習得に取り組む。 また、すでに実施している研究の雑誌掲載を目指し、改定作業に当たりたい。
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Research Products
(2 results)