2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K22092
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
酒本 隆太 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50880275)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | ICAPM / リスク / 投資期間 / 通貨ポートフォリオ / ウェーブレット / キャリートレード / バリューポートフォリオ / ファクターモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではファイナンス研究の基礎となっているリスク・リターンの関係について分析を行う。Capital Asset Pricing Model(CAPM)を始めとするファイナンスのモデルでは、リスク・リターンについてトレードオフの関係があるとされている。しかし実証分野の研究では採用するモデル、期間、推定方法などにより結果が異なり、必ずしもトレードオフの関係が見いだせるわけではない。このような状況を踏まえ金融市場におけるリスクマネジメントの高度化に貢献するため、本研究ではリスク・リターンの関係の研究を2つの方向に拡張する。1つ目は米国株式市場について、投資期間を考慮したモデルを推定する(研究A)。2つ目は株式市場よりも更に取引高の大きな市場である為替市場におけるリスク・リターンの関係を検証する(研究B)。 研究Aでは投資期間を考慮した上でリスク・リターンの分析を行う。本研究では従来の研究のように短期と長期とを明確に2つの期間に分割するのではなく、連続的に分析を行うためにウェーブレットアプローチを採用する。 研究Bでは為替ポートフォリオにおけるリスク・リターンの関係を推定する。1つ目の独自性は単一の通貨ではなく通貨ポートフォリオを導入したことである。通貨ポートフォリオでは単一通貨で行う場合よりも個別のノイズが相殺される。さらにリスク分散されているため、実際の投資戦略に応用しやすいというメリットがある。2つ目の独自性は、Whitelaw (2000, RFS)により株式市場で示されているように、リスク・リターンの関係が経済状況と共に変化する点を考慮した推定を行うことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究Aについては国際査読誌に掲載が決定している。研究Bについてはヘリオットワット大学のByrne教授との国際研究として、ワーキングペーパーが公開されている。研究Bについても国際査読誌の投稿を行ったが、掲載には至らなかった。現在、論文の問題点として指摘された部分の修正を行っている。研究Aが掲載されたことで、さらにアセットクラスを広げるという問題意識から仮想通貨の分析にも着手できている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究Bについては国際査読誌の掲載を目指して投稿を続ける。査読者から本研究の特徴の1つである条件付きモデルと一般的な条件なしモデルの区別がわかりにくいとの指摘があった。条件付きモデルの特徴であるパラメータが経済状況に対応して、時間と共に変動していることをよりわかりやすく表示するための改訂を行っている。 新たに着手した仮想通貨の研究では予想モデルに基づき、仮想通貨ポートフォリオと無リスク資産のウェイトを動的に変化させるシミュレーションを行っている。この手法では仮想通貨の問題点である高いボラティリティを抑制することにより、シャープレシオの向上を目指す。
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Causes of Carryover |
データの購入がプロジェクトにおいて最も資金が発生する部分である。推定モデルの構築はほぼ終了しているため、より最新のデータを取得するためにデータの購入のタイミングを遅らせた。
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