2021 Fiscal Year Research-status Report
動学的確率的一般均衡モデルによる長期停滞ヒステリシスモデルの開発と政策分析
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20K22095
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
小松 悟朗 城西国際大学, 国際アドミニストレーション研究科, 准教授 (60878247)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | DSGE / 長期停滞 / ヒステリシス / 金融政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
08年の米国金融危機以降、世界経済は日本の「失われた20年」のような「長期停滞」に陥っている。とりわけ、過去の大きなショックが非定常なGDPの下落を引き起こす「ヒステリシス」(履歴効果)は、長期停滞の最大の問題の1つであり、現在このモデル化と政策対応が各国政府の喫緊の課題となっている。 しかし、現 在金融・財政政策運営において主要なツールである動学的確率的一般均衡(Dynamic Stochastic General Equilibrium: DSGE)モデルでは、最適価格決定のミク ロ的基礎から導出された供給曲線において、価格マークアップが平均回帰し同時に産出や他のマクロ変数も定常値に収束するため、産出の単位根過程の再現は難しい。 本研究の目的は、(1)金融・財政政策の標準モデルである基本的なニュー・ケインジアンDSGEモデルによる、長期停滞ヒステリシス(非定常)モデルの開発と、(2)モデルを用いた金融政策のシミュレーションを行うことである。長期停滞による産出量の非定常な下落を再現することで、これまで取扱えなかった単位根過程を含むDSGEモデルの開発に広く適用され得るモデル開発手法の提唱を目指す。 これまでの研究では、(1)において重要となるヒステリシス供給曲線の開発を行い、(2)における政策シミュレーションのためのパラメータの検討を行った。過去の大きな負のショックが残り企業の再参入が阻害されマクロ集計において直接価格最適化ができず、ショックの履歴を残す過去の産出水準に制約された価格最適が行われるという着想をもとに、非定常なGDPの差分である定常なGDP 成長率を供給曲線の内生変数に用いた。これにより、既存のミクロ的基礎と整合的にニュー・ケインジアンDSGEモデルにおける新たな供給曲線を構築した。また、産出量の単位根過程を再現するためヒステリシス強度を表すパラメータの値を検討し、金融政策との関連を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍におけるオンライン授業やハイブリッド授業などへの準備・対応負担が予想以上に多く、本研究へのエフォートは確保しつつも断続的な研究をせざるを得なくなっている。具体的には、ヒステリシス強度を示すパラメータの値の妥当性の検討や既存研究との比較検討に時間を割くことができていない。また、現実の金融政策運営への示唆を得るには金融政策関数の違いによるモデルの動学特性を比較検討することが必要だが、上述の理由により継続したモデルの比較検討が困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の2つの推進方策にもとづき研究を遂行する。まず、これまで開発できた長期停滞ヒステリシスを再現する供給曲線モデルの、 カリブレーション(パラメータ設定・妥当性)の検討を行う。既存研究によるニュー・ケインジアンDSGEモデルによる類似のパラメータ空間研究と比較し、動学の安定性やパラメータの定義域の違いによる政策示唆を引き出す。 次に、金融政策のシミュレーションを行う。基本DSGEモデルと比較し、ヒステリシスをもたらすパラメータ・ショックを特定する。通常の最適価格設定する基本 DSGEモデル(Gali 2015)と、本研究で開発したヒステリシスDSGEモデルの比較検討を行う。ヒステリシス強度を示すパラメータの値によっては生産水準の非定常 性の影響が大きく合理的期待均衡解が一意とならない問題(indeterminacy)が十分予想されるため、均衡解が一意の鞍点経路となるパラメータ空間の検討を精緻 に行いモデルの動学特性への示唆を得る。各種パラメータのヒステリシスへの感度分析を行いながら、生産やインフレに恒常的に近い下落をもたらす主要な構造 ショックを特定し、さらにショックに対応する利下げや減税等の金融・財政政策対応の定量化を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍におけるオンライン授業やハイブリッド授業などへの準備・対応負担が予想以上に多く断続的な研究をせざるを得なくなり、当初計画した研究費の執行が困難であった。 2022年度は、旅費を除いた、2021年度に使用するはずだった物品費とその他の費用(主に学術図書と論文校正費)を、当初の使用計画そのままに使用する予定である。
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Research Products
(2 results)