2020 Fiscal Year Research-status Report
フォールトラインに基づく職場集団の「分断」発生プロセスの解明
Project/Area Number |
20K22097
|
Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
内藤 知加恵 麗澤大学, 国際学部, 助教 (70881192)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 多様性 / フォールトライン / 多様な働き方 / 分断 / ダイバーシティ・マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、働き方の多様化に伴って職場内に「分断」(サブグループ化)が生じるメカニズムの解明を目的とする。具体的には、人口統計学的な要因だけでなく、短時間勤務や在宅勤務など働き方の差異が「トリガー」となって職場内の分断が生じると仮定し、「知覚」を含めた精緻な分断発生プロセスを明らかにする。 本研究の意義は、以下の三点である。第一に、働き方の違いを属性の一つとして捉えている点である。欧米の多様性研究の多くは、人種・性別などの社会的アイデンティティに関連したサブグループ化に着目する。本研究は、日本の文脈を考慮し、働き方の違いが不公平感を生み、分断が生じると仮定する。第二に、分断の具体的な「トリガー」となる出来事を明らかにする点である。既存研究の多くはサブグループ化が実際に成員によって知覚されているかを検証しておらず、何がトリガーとなって分断が起こるのかについては未知の部分が多い。第三に、職場集団内の客観指標(フォールトライン値)が「閾値」を超え分断に至る動的プロセスを可視化しようとする点である。先行研究では、具体的に分断にまで発展する閾値については論じられていない。本研究は、フォールトライン値の算出とシミュレーション分析との組み合わせにより閾値を示し、分断プロセスの可視化を試みる。 上記目的のため、初年度は以下を実施した。 (1)既存研究サーベイ:海外学術雑誌データベースや書籍をもとに、多様性、フォールトライン、柔軟な働き方、シミュレーション分析に関する文献調査を実施した。 (2)データ分析:質問紙調査(実施済)で得られたデータをもとに、サブグループ化における個人の心理過程に関する理論モデルを構築した。 (3)シミュレーション分析:文献研究をもとに、本研究に適したシミュレーション言語を比較・検討した。シミュレーション分析に当たっては、新たに工学領域の研究者と連携した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗は、以下のとおりである。 (1)既存研究サーベイ:海外雑誌データベースを利用し、予定通り進行している。シミュレーション分析については、経営情報系の文献も含めて調査をしている。 (2)企業へのヒアリング調査:企業へのヒアリング調査はコロナ禍で実施が難航していることから、シミュレーション実験への切り替えを検討している。すでに2018年に収集したデータ(大規模病院看護職約1,000名対象)を使用する他、新たにWEB調査会社から収集予定である。 (3)シミュレーション分析:2020年12月に、シミュレーション分析に必要な仕様を満たすPC等機器を購入した。また同時期より、Zoomで工学系研究者との打ち合わせを開始し、継続的に実施している。 (成果公表)【学会発表】2020年8月にオンライン開催されたAcademy of Management(米国経営学会)年次大会において、Health Care Management divisionのProfessional Development Workshopに参加し、自身の研究内容を紹介し、海外研究者から研究内容についての意見・助言を受けた。【論文】サブグループ化が生じるメカニズムに関する理論モデルを検討し、2021年5月に国内学術誌に原著論文として投稿予定である。すでに得られているデータをもとに、新たな理論モデルの構築と分析を行い、共著で査読付き論文として和文学術誌に投稿予定である(2021年5月中)。また、組織行動論における「分析方法」についての論文を共著で執筆中であり、2021年夏までに学術誌への投稿を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の方法で研究を推進する。 (1)既存研究サーベイ:海外雑誌データベースを利用し、さらに最新の研究動向を把握する。シミュレーション分析については、経営情報分野の文献も必須であり、海外文献を中心に精査する。また、自身が参加するキャリアの国際比較研究コンソーシアム(The Cross-Cultural Collaboration on Contemporary Careers: 5C Group)に参加する海外研究者とのネットワークを生かし、多様な働き方とサブグループ化の関係について文献を収集・分析する。 (2)企業へのヒアリング調査:今後も企業へのヒアリング調査は、コロナ禍で見通せない状況にある。そのため、前述のように、シミュレーション分析を使用した実験手法への切り替えを検討している。本研究は、一組織内の集団と集団成員を調査対象とする性質上、公表されている二次データに拠ることが困難である。そのため、すでに収集したデータ(大規模病院看護職約1,000名対象)を利用する他、LINEを使用して簡易にデータ収集可能な「経験サンプリング法」を用いて、新たにWEB調査会社から収集することを検討している。 (3)シミュレーション分析:シミュレーション分析に関する文献研究をもとに、本研究に適したシミュレーション言語の選定とプログラミング方法の確認など、シミュレーション分析の準備を進める。東京工科大学コンピュータサイエンス学部・金光永煥専任講師と連携し、2021年8月にプログラムの完成を予定している。成果は、経営情報系の学会誌への投稿の他、経営行動科学学会年次大会での公表を予定している。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、企業でのヒアリング調査、対面での研究者打合せ、学会出張がなくなった。実施状況報告書にも記載のように、Zoomでの打ち合わせや、シミュレーション実験への手法切り替えに伴い、次年度使用額が生じている。
|
Research Products
(1 results)