2021 Fiscal Year Research-status Report
フォールトラインに基づく職場集団の「分断」発生プロセスの解明
Project/Area Number |
20K22097
|
Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
内藤 知加恵 麗澤大学, 国際学部, 助教 (70881192)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
|
Keywords | フォールトライン / ダイバーシティ / 多様な働き方 / 分断 / 柔軟な働き方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、働き方の多様化に伴って職場内に「分断」(サブグループ化)が生じるメカニズムの解明を目的とする。具体的には、人口統計学的な要因だけでなく、短時間勤務や在宅勤務など働き方の差異が「トリガー」となって職場内の分断が生じると仮定し、「知覚」を含めた精緻な分断発生プロセスを明らかにする。 当該年度に実施した研究成果の具体的内容●(1)既存研究サーベイ:海外雑誌データベースを利用し、さらに最新の研究動向を把握した。本研究のテーマであるフォールトラインは、近年、集団成員によるサブグループの「知覚」および「類型」が重視される傾向にある。文献調査でも、2020年、2021年に同テーマに近接した論文が抽出された。 ●(2)トリガー調査:コロナ禍により、当初予定していた企業へのヒアリング調査実施が困難になったため、オンライン調査会社を利用した調査に切り替えた。調査票設計を21年度内に終了し、調査は繰り越した22年度4月に実施した。働き方の多様性が職場の人間関係に及ぼす影響について記述式調査を行い、回答を得た。 ●(3)シミュレーション分析:情報系研究者と、オンラインでの打ち合わせを通して連携し、シミュレーション分析に関する文献研究を進めた。本研究に適したシミュレーション言語の選定とプログラミング方法の確認など、シミュレーション分析の準備を進めた。さらに、フォールトラインをコンピュータでシミュレーションする文献を収集し研究を進めている。組織行動論分野においても、近年シミュレーション分析が少しずつ用いられるようになっており、分断の過程を可視化しようとする本研究はこうした動向に即したものになっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による変更があったものの、当初想定していた研究内容を進めることができ、成果が得られている。 (1)既存研究サーベイ:複数の海外雑誌データベースと年間契約をし、予定通り進行している。 (2)トリガー調査:2022年度に跨ったものの、予定通り実施することができている。翌年度繰り越しの理由は、コロナ禍により、当初予定していた企業へのヒアリング調査実施できず、オンライン調査会社を利用した調査に切り替えたためである。調査では、働き方の多様性を軸に、職場分断のきっかけとなった事象を記述してもらった。分析結果は本年度中に学会発表予定である。また、この調査で得られたデータをもとに、シナリオを策定し、準実験調査を実施予定である。 (3)シミュレーション分析:文献調査と研究者ネットワークを活用した聞き取りの結果、情報系研究者が開発したツールが本研究のシミュレーション分析に活用可能ということが分かった。当該研究者とコンタクトを取った。 (成果公表)【論文】本研究をもとに、サブグループ化が生じるメカニズムに関する理論モデルを検討し、2021年に慶應経営論集(査読付き)に原著掲載された。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、研究計画に沿って、下記3つの内容を進める予定である。 第一に、●(1)既存研究サーベイ:フォールトラインに関する研究は、2020年頃を境に、サブグループの知覚および類型がキーワードになっている。こうした動向を踏まえて、社会心理学分野の文献を中心にさらに調査を進める予定である。また、多様な働き方が早くから浸透している看護分野の研究者からも助言を受け、多様な働き方と職場の分断についての理論化を進める予定である。また、本研究サーベイで得られた内容をレビューし、22年度刊行予定の単著学術書の中で公表予定である。●(2)トリガー分析:職場に分断が生じるきっかけ(トリガー)について、21年度にオンライン調査(記述式)を行った。調査では、具体的なトリガーの他、当時の職場の状況、組織の状況、属性情報などを把握した。この調査をもとに、トリガーの内容分析を進める。具体的には、利用者・被利用者それぞれにおいて、男女で違いがあるのか、また、テレワーク利用の有無・頻度による違いがあるのか、きっかけになったキーパーソンと回答者との関係性などを分析していく。分析にはフリーソフトウェアKH Coderを用いて、クラスターごとに分析をする。結果は、学会発表および論文で公表予定である。●(3)シミュレーション分析:本研究の分析に利用可能なシミュレーションツールキットの特定をすることができている。このキットを使用して、分断発生過程の可視化ができるよう研究を進める。 上記で得られた知見をもとに、本研究の後続研究(22年度-24年度若手研究)につなげていく予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により、企業への調査が困難となったため、繰り越しとした。オンライン調査会社のモニターを利用した調査に切り替え、調査票の作成を21年度内に実施し、調査自体は22年度4月に実施することとしたた。
|
Research Products
(2 results)