2020 Fiscal Year Research-status Report
家族コミュニティにおける利他主義に関する研究:行動経済学的アプローチ
Project/Area Number |
20K22098
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
周 梦媛 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 助教 (00880212)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 家族コミュニティ / 家族の伝統 / 間接互恵性 / 遺産動機 / 遺産態度 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度実施した研究の具体的内容は、三世代における遺産の源(Inheritance Source)に依存する日本人の遺産動機・意向の解明である。具体的には、回答者が両親と義理の両親から遺産・生前贈与を受け、回答者の子供と配偶者にできるだけ多くの遺産を残したいかを理論と実証分析を行なった。理論の面で、心理会計理論の観点を導入して血統ベースの家族の伝統モデル(Bloodline-based family tradition model)を立ち上げた。実証の面で、大阪大学の「くらしの好みと満足度についてのアンケート」調査を利用し、子供や配偶者に遺産を残す態度が遺産の源に依存する事が実証された。モデルで実証結果を説明した。 研究の意義は、コミュニティベースの間接互恵性を探究したことである。日本の家文化は特殊であり、「夫の家に嫁ぐ」という表現がある。それ故、男性と女性の遺産態度を同一視することができない。また、本研究は心理会計の観点から出発し、自分の両親と義理の両親からもらった遺産・生前贈与はそれぞれの心の家計簿に預けることを示唆した。さらに、本研究は新たな視点から遺産動機を解釈する独自性がある。 本研究は従来の純粋利他性モデルやWarm-glowタイプモデルで説明できない間接互恵性を考察したことは重要である。本来の研究は誰からの遺産を継続したこと(被相続人)を問わず、全体として相続体験を考えた。しかしながら、心理会計理論により、入手ソースに応じて代替可能性(Fungibility)が違反されるため、ソースが極めて重要であることを示唆している。本研究は三世帯における遺産の源を考慮に入れることにより、親の子供に対する遺産意向・動機がなぜ、どのようにチェンジされるのかを検証し、今後、財政政策や富の不平等管理の有効性にどのような影響を与えるのかについて、新たな視点を提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一本の論文を学術誌に投稿し、一回目の修正して再投稿を受け、論文の大幅な修正を行った。 再投稿した後、現在、Minor Revisionを受けて、修正を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策について、まず血統ベースの家族の伝統モデルに基づき、税金を導入したモデルを考え、課税がどのように機能するかを検証することでリカードの等価定理への影響を論じる。実証の面で、大阪大学の「くらしの好みと満足度についてのアンケート」の仮質問を利用する予定である。仮に、将来相続税が増え、子供への遺産額がどのように変化するかを検証する。
慶應義塾大学の「日本家計パネル調査」を利用し、血統ベースの家族の伝統モデルと同じような遺産の源による相続金額が遺産贈与の意向にどのように変化するかを分析する予定である。家族コミュニティにおける利他主義のメカニズムを実証的に解明することを試みる。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナウィルスの影響により海外で学会報告することができなかったため、 当初予定していた旅費支出がなくなり、次年度使用額が生じた。
使用計画:論文の英文校正として、使う予定である。
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